事実上の決勝戦 ナダル対ティエム SF準決勝 2017全仏オープン 13日目
6月9(金)に行われる全仏オープン男子シングル準決勝の2試合で、特にナダル選手対ティエム選手の試合は大きく注目される試合となります(以下選手敬称略)
試合開始時間は、
・マレー対ワウリンカ 19;45分開始予定
・ナダル対ティエム 22;00「以降」開始予定
となっています。どちらもセンターコートのフィリップシャトリエで行われます。
今までと違う所は、ナダル対ティエム戦は、マレー対ワウリンカが早く終了しても「22;00以前には始まらない」という事です。日程に「Not before」の文字から判断できます。ただし、その間が2時間15分という時間を考えると、ストレート勝ちでない以外は、22;00以降にずれ込む事が濃厚です。まだ本調子でないマレーと言えどグランドスラムのセミファイナルであっさりストレートで勝負が付くとは考えにくいため、22;30当りから開始と考えるのが妥当に思います。
*その後、「Not before」PM3;30に変更され、正式に22;30以降の開始となりました。
*マレー対ワウリンカが激戦になっており、日を跨ぐ可能性も出てきました。
ナダル 対 ティエム
ここ1か月で4回目の対戦 徐々に肉薄するティエム
この対戦は4月末に行われたバルセロナオープンからのグレードの高い大会では必ず対戦している組み合わせです。
1 バルセロナオープン 決勝
バルセロナでは去年の2月のアルゼンチンオープン以来の対戦となりましたが、SFでマレーにフルセット勝利して勢いにのるティエムをナダルが寄せ付けず一蹴するかのようなストレート勝ちでした。
この時点ではまだナダルには大きく及ばないという試合内容でした。
2 マドリードオープン 決勝
ナダルはフォニーニやゴファンに苦戦したものの、ジョコビッチに完勝して尻上がりに調子を上げ、ティエムも特に障壁のないまま駆け上がってきてのこの戦い。
1stゲームは拮抗しタイブレークになるも、粘りの守備でしのぎってセットを取るとティエムは力尽きてしまいました。
しかし、バルセロナの時より明らかにナダルに対抗できる態勢を整えつつある印象を植え付ける試合でした。
3 イタリア国際(ローマ)オープン QFベスト8
ドローの関係で早期に実現したこの対決は、ナダルの些細なミスを逃さず、強打で押したティエムに対して、ナダルは最後までエラーが多く、結果ティエムの完勝となりました。
そしてこのナダル戦の勝利が今シーズンのナダルのクレーコートでの唯一の黒星となっています。
状態はティエムの方が良好
両者の現状を見た場合、試合に対しての準備ができているのはティエムの方と見ます。互いにテニスの質にブレはないですが、どちらかというとナダルの方がエンジンのかかりがどの試合でも遅いです。
ナダルは初戦のペール戦から1セットも落とさずの完勝劇を続けていますが、完全にナダルが相手を凌駕しているという試合ばかりではありません。隙が若干見受けられます。
バウティスタとの戦いやカレーノブスタ戦でも見られたように自らのショットミスで相手が何もしてないブレークゲームを献上する姿がしばしみられました。しかし、それを並外れた運動量と反応で凌駕し、ミスで試合を崩す以前に相手の心が折れるのが先という試合展開ばかりでした。
果たして同じ事をティエムにもできるでしょうか?それをやるにはここまで拮抗した試合が出来ていないのはいささかマイナスになっていると見ます。カレーノブスタ選手が怪我で早期に棄権しなければよい調整になった可能性はありますが、1セットしか試合ができていません。
対するティエムも全てストレートの圧勝劇を見せてますが、QFのジョコビッチ戦は圧勝とは言え、1stセットはタイブレークに持ち込まれており、かつ互いのミニブレークがセーブできない展開になるなど、「拮抗した」場面での試合をこなしています。
ユーロスポーツの分析
How Dominic Thiem can beat Rafael Nadal - Roland Garros 2017 (HD)
ユーロスポーツの分析によると、
①ティエムのフォアハンドアベレージは135kmでナダルの127kmを圧倒
②相手1stサーブでのポイント奪取率48%
上記2点が特に注目されています。
特に②については、相手の1stサーブのリターン位置がベースライン付近でこれは対戦相手に相当の圧力を与えていると分析しています。そのため、相手1stサービスでポイントが取れるという分析となってます。
試合序盤はティエムが支配する展開になる可能性
ナダルが尻上がりにどの試合もこなすのに対してティエムはジョコビッチ戦のような序盤の慎重さは見せず、思い切りアグレッシブにくるのではないでしょうか。とすると、序盤のナダルのミスの多さを考えると1stセットは苦戦必至となるでしょう。
ただし、ナダルは例え1stを落としてもそこから崩れる事は考えにくく、1stをティエムが取る展開の方が寧ろ試合は伯仲したものになるのではないでしょうか。そういう展開が期待したい所です。尻上がりになる前にナダルが1stを取るようですと、一気にナダルに押し切られる可能性の方が高いでしょう。
1st | 2nd | 3rd | result | |
ナダル | 6 | 6 | 6 | 3 |
ティエム | 3 | 4 | 0 | 0 |
1stセット
第1ゲーム ナダルのサービス 回り込んでのリターンや前に誘いこんでのクロスなどナダルが持ち味を見せるも、ティエムのクロスショットに加え、ダブルフォルトやフレームショットでブレークポイントを握られると、リターンをネットにかけてティエムがいきなりのブレークを取る。
第2ゲーム ティエムのサービス ナダルのしぶといリターンでポイントを奪うと、ナダルの深いリターンをネットにかける。しかしナダルもイージーなショットをアウトにするなど、どちらもポイントが欲しい。そんな中ティエムがリターンをネットにかけナダルがブレークポイントを握ると、ティエムの強打がまたしてもネットにかかりナダルが即ブレークバックに成功する。
第3ゲーム ナダルのサービス ナダルは全仏1stセットはショットミスが多いのはこの試合も変わらず、2つのブレークポイントを握られる。しかし高低を使ったリターンでティエムのミスを誘いデュースに持ち込むと、センターへのサービスエースでこのゲームをキープする。
第4ゲーム ティエムのサービス ナダルのフレームショットでチャンスを迎えるもフレームショットでアウトにしてしまい、ダブルフォルトを喫するなど、3つのブレークポイントを握られる。ここでフォアの強打を3連続で決めデュースに持ち込む。ここでナダルがバックハンドクロスを決め4度目のブレークポイントを握るとティエムのフォアショットがサイドアウトとなり、ナダルがブレーク先行する。
第5ゲーム ナダルのサービス ブレークで有利になったナダルはしかし、相変わらずショットが安定せず、バックアウトを繰り返し2つのブレークポイントを握られる。しかし、この局面で深く鋭いショットでデュースに持ち込むと、深いクロスに深いクロスで打ち返すなどし、このゲームをキープして流れを持ってくる。
第6ゲーム ティエムのサービス 激しい打ち合いからの華麗なドロップショットでティエムにプレッシャーをかけるも、ティエムは屈せず前に出てのフォアスマッシュを決めこのゲームをキープする。
第7ゲーム ナダルのサービス 執拗な深いバックハンド攻めや、前に出てのプレイ、更にはティエムの強打から1発で態勢を逆転させてのフォアストレートと多彩な攻めを見せナダルがラブゲームキープする。
第8ゲーム ティエムのサービス ナダルのリターンのフォアクロスが強烈に決まるなどするも、ティエムが打ち切り、このゲームをキープする。
第9ゲーム ナダルのサービンフォーザセット 左右に振ってのショットでティエムを揺さぶり、ティエムはリターンに苦しみ3つのセットポイントを握られると、長いラリーでティエムがポイントを急いでセンターへのリターンをアウトにしてしまい、このセットゲームカウント6-3でナダルが先取する。
ここまで互いにミスが目立つ試合で観客もそこまで大きく沸く場面が少ないものの、粘りのあるショットとウイナー級のショットを拾うナダルの方が持ち味を発揮しており、展開的にもナダルがじわりじわりと上げていっている印象。
このままだとティエムはイイ所がなくストレートで押し切られそうな展開に見えます。ユーロスポーツの分析とは違い、ベースライン近くで打ち返す回数もこの試合は少なく、良さが出ていません。
2ndセット
第1ゲーム ティエムのサービス 前におびき出しての華麗なロブを決めるナダル。ティエムは攻め急ぎリターンをアウトにするなどし、デュースになる。ここから強気のクロスショットやナダルのドロップに対応したショットなどで辛うじてキープに成功する。
第2ゲーム ナダルのサービス ティエムは1stサーブで今までのように前で構えてプレッシャーをかける。するとナダルはスマッシュボレーをネットに掛けてしまう。更にはナダルを崩してのドロップショットでティエムが2つのブレークポイントを握るも、ナダルはサーブでギアを上げデュースに持ち込む。そして最後も力強いセンターのエースでピンチを楽しむかのようなナダルのキープ劇を見せる。
第3ゲーム ティエムのサービス 30-30からの長いラリーでティエムがスライスで切った球を逃さすナダルがストレートで押し切りブレークポイントを握るも、踏ん張りデュースに。デュースの凌ぎあいが続く中、ナダルの深いクロスにティエムが対応できず2度目のブレークポイントを握られると、しぶといリターンの応酬でティエムが耐え切れずにこの重要なゲームをナダルにブレークされる。
このブレークのされ方は今までナダルに敗れた選手のようにメンタルに来そうなブレークです。
第4ゲーム ナダルのサービス ティエムのリターンが淡泊にアウトになるなどし、ナダルが労せずキープする。
第5ゲーム ティエムのサービス 試合展開は悪いがあきらめずにワイドやクロスに強いショットを打ち続け、このゲームは労せずキープする。
第6ゲーム ナダルのサービス ナダルの粘り、フォアの逆クロスがコースに決まるなどティエムが下を向いてしまう程に圧倒し、労せずしてキープする。
第7ゲーム ティエムのサービス ナダルに左右に強烈なクロスを打たれうつむいてしまうティエム。しかしそこから連続でドロップを決め、最後はナダルのネットに出てのスマッシュミスにより、ティエムが辛うじてキープに成功する。
第8ゲーム ナダルのサービス ナダルがダブルフォルトを犯すも、ティエムの強打がコート上を捉えず、ナダルが労せずキープする。
第9ゲーム ティエムのサービス サーブで押すティエムがラブゲームキープする。
第10ゲーム ナダルのサービンフォーザセット センターの強烈なサーブやスマッシュにも反応するティエム。しかしナダルは前に出てこれらのリターンに全て対応し、ラブゲームでこのゲームを取り、ゲームカウント6-4でナダルが2セット連取する。
ナダルという名前の重圧が重くのしかかり、打てる所で打てない場面が続くとナダルに容赦なく左右に振られて重要なポイントになればなるほどナダルに防がれる状況。1ブレーク差で取られたものの、圧倒的な差を感じるセットでした。このまま行ってしまいそうですがどうなるでしょうか。
3rdセット
第1ゲーム ティエムのサービス 強気のショットが立て続けにアウトとなり、ブレークポイントを握られると、ナダルの深いリターンをセンターに帰すもバックアウトとなり、試合を決定づけそうなブレークをナダルが握る。
残念ながら勝負を決したとみていいブレークでしょう。ナダルはまだこの状態でもミスを続けるでしょうか。ナダルのミスが減らなくてもチャンスはあまりないかもしれませんが・・・。観客はウエーブをしたりブーイングをするなど、試合内容に不満がある様子を見せる。
第2ゲーム ナダルのサービス ティエムのショットを大きくアウトするなど、観客もざわざわする展開でナダルがラブゲームキープする。
第3ゲーム ティエムのサービス ティエムを左右に揺さ振り優位にすすめるナダル。デュースに持ち込むも、ティエムのストレートが力んでアウトになると、ティエムの狙いすました強打を待ち構えて横を抜けるストレートショットをナダルが決め、2ブレークアップを果たす。
第4ゲーム ナダルのサービス スマッシュをミスらず立て続けに決め、ラブゲームキープする。
第5ゲーム ティエムのサービス ティエムのリターンが力無くアウトになると観客からブーイングが起こってしまう。更にはナダルのキツイ角度のリターンエースが決まり3つのブレークポイントを握られると、容赦ないクロスや前に出てのショットを決めてラブゲームでブレークし、3連続ブレークとなる。
第6ゲーム ナダルのサービンフォーザマッチ ナダルのスマッシュミスやリターンミスが出るなど、ティエムがブレークポイントを握るも、ティエムのショットもコートを捉えず、ブレークポイントも生かせない。更にティエムのバックハンドショットが大きくアウトになりマッチポイントを迎えると、最後はセンターへのエースを返せず、結果的にはナダルのストレート勝利となりました。
ティエム選手のパフォーマンスにはRoland Garrosの観客及び視聴者もガッガリといった所でしょうか。しかしそれも全てナダルのプレイぶりにより、1回戦から続いている光景が何も変わらずに繰り返された・・という事が言えるでしょう。
ティエムは最初は2ndセットになると、ナダルのサービスの1st時前に出るなど工夫や抵抗も見せたのですが、ナダルの真骨頂はむしろ2ndでのポイント確率で、クレーコートシーズンは概ね75%程を保っており、驚異的な数字です。1stだけでなく、2ndサーブでも前に出るべきだったのかもしれません。
ナダルに関しては、テニスの内容で言えばこの準決勝が全仏で最もパフォーマンスが悪かったと見ます。ファイナルセットになってもミスが減らず、決めに行くショットが決まりません。
とは言え、ブレークポイントを握られると途端にギアを上げて鋭いショットを連発している当りは、この準決勝であっても何かを試行錯誤している段階とも見えました。ただし、序盤の入りの悪さが改善されておらず、決勝ではさすがにこのままではいけないとは思ってるでしょう。
決勝の対戦相手はマレーとの激闘を制したワウリンカ選手となりました。ジュネーブオープンから休みなく試合に出ていますが、グランドスラムの集中力は相当なもので体力切れは期待できません。
決勝は6月11(日)日本時間21;45開始予定となっております。