ナダル対ワウリンカ F決勝 2017全仏オープン 15日目
6月11(日)ローランギャロスで行われる全仏オープンを決勝を残すのみとなりました。ナダル選手対ワウリンカ選手の決勝となりました(以下選手敬称略)。
ナダル 対 ワウリンカ
直近ではほぼ互角の争い
ナダル 15 対 3 ワウリンカ
2人の対決は2007年のオースラリアオープンから始まりました。そこから2013年まではワウリンカはナダルに1度も勝てずに12連敗を喫します。
しかし、2014年以降は、全豪オープンの決勝でナダルに3-1で勝利し、そこからの6戦では3勝3敗と互角の成績となってます。この6戦はお互いの調子がそのまま反映された試合ばかりで、それまでの勝ち上がりがそのまま勝敗に直結しており、全豪以外は全てストレートで勝負がついています。
尚、クレイコートでの対戦は5対1でナダルがリードしてます。
2017全仏ではどちらが調子が良いか
ここまでの6戦を見た限りですとワウリンカの方が調子は良いと判断します。序盤戦から危なげなく、しかし確実に勝ってきており、QFのチリッチ戦から一気にギアを挙げてきて、SFのマレー戦ではお互い譲らずの意地の張り合いで好勝負を披露しました。
ジュネーブオープンで4試合戦い、間を置かずに全仏も出場してますが、グランドスラムにおいて体力切れで敗退した事がないため、スタミナ面は全く問題ないはずです。準決勝のマレー戦の今大会最長時間の疲労よりも、激戦を制したアドレナリンの方が上回り、むしろ調子は更によくなっていくのではないでしょうか。
対するナダルは、6戦を通じて序盤の入りにややもたつきがあります。QFティエム戦でもブレークされての入りで、そこから重要な場面での集中力はさすがと言えど、試合を通じてもイージーなミスが目立ちました。このイージーなミスが続いてしまうと現在のワウリンカとの対戦には少し不安を覚える所です。
しかしながら、それこそがナダルのペースとも言えます。イージーなミスの裏に驚異的な守備力も発揮しており、その両面が対戦相手を惑わせます。そして欲しい場面では実はほとんどミスしません。その集中力とポイントをわきまえたプレイによりこれまでの対戦相手は最終セットまでには心を完全に折られてしまいました。ジョコビッチを完勝で破ったティエムさえもその罠にハマってしまいました。
ナダルが決勝に向けても特にミスの多さを気にしていない発言をしていた事からも、これが彼の現状のスタイルと見ていいのではないでしょうか。
序盤で試合の趨勢が決まる可能性
ナダルのプレイスタイルからも、この試合は序盤次第という見方を強めます。
序盤にナダルがセットを取るようですと、これまで見せつけてきたナダルのプレイスタイルが威力を発揮する可能性は高いです。ワウリンカが心を折られないとも限らないぐらいナダルのプレイは局面で力を発揮します。
逆に1stセットをワウリンカが取ると、ナダルが演じてきたこれまでの6戦とは明らかに違う展開なため、今度はナダルがプレイスタイルを変える可能性があり、こうなるとワウリンカのストレート勝ちも見えてきます。ナダルの心が乱れる可能性も否定できません。それぐらいナダルは今ミスが多い状態です。
攻撃的にワウリンカは行くでしょうがそれでもミスの多いナダルに1stセットを取れるかと言えば、簡単にはいかないでしょう。
試合内容
1st | 2nd | 3rd | 4th | 5th | result | |
ナダル | 6 | 6 | 6 | 3 | ||
ワウリンカ | 2 | 3 | 1 | 0 |
1stセット
1ゲーム ナダルのサービス
立ち上がりが注目されたナダルの立ち上がりはこれまでと違い、深いショットやライン際のショットも決め、ラブゲームキープと決勝はギアが違う所を見せつける。
2ゲーム ワウリンカのサービス
1stポイントを取られてマズイ流れからウイナーを立て続けに決め、今までの対戦相手とは一味違う所を見せつけるキープ。
3ゲーム ナダルのサービス
30-0から立て続けにリターンをミスを犯すナダル。更には浅くなったリターンをスマッシュされブレークポイントを握られる。しかし、ここからサーブでワウリンカを崩しキープを果たす。
4ゲーム ワウリンカのサービス
クロスの打ち合いやストレートの打ち合いでワウリンカがネットに掛けブレークポイントを握られる。ここをワイドサーブで崩しデュースに。ナダルに再三ブレークポイントを握られるも、サーブや前に出る攻めで凌ぐと、6度のデュースの末、連続でワイトのサーブでナダルのリターンがアウトになり、ワウリンカが気合のキープを果たす。
5ゲーム ナダルのサービス
ワウリンカの大外からのストレートが決まるものの、ナダルが2ndサーブをセンターにエースを決めキープする
6ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルの大外からのストレートが決まり、更にワウリンカがリターンをネットにかけ3つのブレークポイントを握る。すると、ナダルの深いワイドへの切り替えしをワウリンカがスライスリターンをするもネットに掛け、ナダルが遂にブレークを果たす。
7ゲーム ナダルのサービス
ナダルのワイドサーブが決まるなど、鋭いリターンにワウリンカが追いつくも、ナダルがボレーで沈め、セット奪取に大きなキープを握る。
8ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルがやや前に出てプレッシャーをかけてラリーの主導権を握ると、バックハンドを執拗に狙いワウリンカの態勢を翻弄し、ナダルがセットポイントを握ると、ワウリンカのリターンが僅かにアウトになり、1stセットはナダルが6-2でナダルが奪取する。
この流れは確実にナダルの流れとなってます。かつ、今までのような序盤のもたつきもなく、鋭いショットを繰り出し、前に出てプレッシャーを掛けに来る。ワウリンカは耐え切れずショットをアウトにし、1stセットはウイナー4本らしくない程攻撃できない状態となってます。
今までの対戦相手同様の流れになりつつあります。ワウリンカは違いを見せられるでしょうか。
2ndセット
1ゲーム ナダルのサービス
ナダルの1stサーブは相変わらず入らない。しかし2ndサーブでもコースを狙ったサーブでワウリンカを崩す。ワウリンカもストレートショットなどで抵抗するが、ナダルの深い切り返しの連続にワウリンカが踏ん張れずナダルがキープする。
2ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルがラリーの主導権を握りワウリンカは防戦一方。更にはクロスとストレートを打ち分けワウリンカが手をついてしまい、3つのブレークポイントを握られる。更には容赦のないナダルのリターンでワウリンカは最後ネットに掛けてラブゲームブレークをナダルが奪う。
このままいくと試合が終わってしまう。そういう雰囲気が醸し出されるこの2ゲームでした。
3ゲーム ナダルのサービス
ナダルのリターンが深く、角度も深いショットが立て続けに決まり、ワウリンカは下を向いてうつむいてしまう。既に心が折れてる感じがあるワウリンカを容赦なく左右に振る。ワウリンカはボールを口にくわえ、打開策の無さに呆然とする。このゲームナダルが労せずキープする。
観客がワウリンカがポイントを取るたび悲鳴に似た声援が飛ぶ。観客もこのままではナダルが押し切る感じている。
4ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルの逆をつく逆クロスが立て続けに決まり打開策に希望を見出す。更には持ち替えてのフォアハンドでの深いショットでナダルのバックアウトを誘い、ワウリンカが希望を持てるキープを果たす。
5ゲーム ナダルのサービス
ナダルの容赦ないフォアスピンショットが決まれば、ワウリンカも浅いボールをストレートで持っていく。更に粘りのラリーでナダルのバックアウトを誘い15-30とする。しかし、ナダルはまたも2ndサーブで強いサーブからのラリーでもワウリンカを左右に動かしバックアウトを誘い、このゲームをキープする。
6ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルのスーパーショットが決まるも、ワウリンカも粘りこのゲームをキープする。
7ゲーム ナダルのサービス
ナダルのギアが更に上がり粘り強いショットからサービスエースとすべての攻撃が決まりラブゲームキープする。
8ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルに厳しいポイントを取られて不利なカウントになるも、ナダルのミスにより辛うじてこのゲームをキープする。
9ゲーム ナダルのサービス
ナダルのプレイが際立つ中、ワウリンカは取れるポイントをミスしてしまいラケットを破壊してしまう。そのままキープし、このセット6-3でナダルが優勝に王手をかける。
この状態になって立て直せた選手は誰もいません。流れ的にもワウリンカには対応策が既になく、このままゲームセットを迎える可能性が激大です。
3rdセット
1ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルは更に攻め続け3つのブレークポイントを握ると、最後は前に出てのショットを決め、あっさりとナダルが優勝へ向けてのブレークを取る。
2ゲーム ナダルのサービス
ナダルの厳しい攻めが際立ち、ブレークの後のラブゲームキープでワウリンカの心をズタズタにする。
3ゲーム ワウリンカのサービス
ナダルに深いショットを更に深いコースで返されたり、前に出てナダルの態勢を崩したにもかかわらずラインを抜かれるショットを打たれる。切れてもおかしくない所だが、ワウリンカが強打でこれを凌ぎ、必死のキープを取る。
4ゲーム ナダルのサービス
ナダル有利のラリーから最後はワウリンカがナダルを崩す見事なプレイを見せ0-30とチャンスをつかむ。しかし、逆クロスの強打でナダルがすぐさま取り返すと、逆をついたショットを連発す。ワウリンカも負けじとベースラインギリギリのショットを決めデュースに。しかしナダルの再三のコーナーを付いたショットがワウリンカのリターンアウトを誘い、ナダルが力でキープを勝ち取る。
5ゲーム ワウリンカのサービス
強打のショットで攻めるも、ナダルは態勢を崩したと思いきやそこから強打のリターンでワウリンカを翻弄し、更にはワウリンカのドロップショットがネットに掛りデュースに。ここから互いの素晴らしい攻めの応酬となり、ナダルのストレートやクロス、ワウリンカの手を伸ばしてのボレー、クロスショットが決まるなど白熱のシーソーゲーム。ワウリンカのバックハンドがアウトになり、ブレークポイントを握られると、ストレートショットがアウトになり、ナダルが2ブレークアップとなる。
6ゲーム ナダルのサービス
ワウリンカは決して悪くなく、強いショットを放つもナダルにそれ以上に厳しいコースに角度をつけてのリターンを決められるなどし、万全のキープを取る。
7ゲーム ワウリンカのサービス
コートに出てのプレイでワウリンカを追い詰め、更にはワウリンカのリターンがアウトになり、0-30に。更にはナダルの厳しい角度のリターンが決まり、ナダルが2つのチャンピオンシップポイントを握る。ナダルの狙いすましたフォアストレートが僅かにサイドアウトとなるも、ラリーからの深いリターンがワウリンカのボディーに入りネットを超えず、この瞬間ナダルは大の字になり勝利の瞬間を味わう。
7戦全てストレート勝利の偉業
ナダルは全仏の7戦において全てストレート勝ちをしただけではなく、5ゲーム取られる事もないほぼ完ぺきな内容で頂点に上り詰めました。更には3回戦あたりからは第3セットになると相手の選手は何もできなくなりキープすらできなくなりました。7戦すべてにおいて最終セットは圧倒的な内容で試合を締めました。
ここまで順調な勝ち上がりでかつ、準決勝でマレーと激戦を制して決勝に向けて万全の状態だったワウリンカも、最後は完全にナダルに屈してしまいました。しかしながらワウリンカは準決勝までに敗れた選手と違い、最後まで食らいつこうとしましたが、この6戦に比べてもナダルのプレイレベルはけた違いに素晴らしく、この出来のナダルならティエム選手も含めてもっと圧倒していたでしょう。それほど今日のナダルは隙がありませんでした。決してワウリンカは悪くなかったです。
試合スタッツ
決勝はワウリンカに1度のブレークも許さずの完勝でした。内容的にもスタッツと一致するかのような圧勝でした。しかしながら前述したようにワウリンカが悪くかったわけではなく、ナダルが全仏の試合の中でも異次元の集中力と粘りを見せました。ウイナーがさほど多くないナダルがワウリンカを上回ったのもスタッツが物語る通りの攻撃的なショットを連発した結果です。そして、その攻撃的なショットでミスが少ないのが今日のナダルでした。誰も太刀打ちできるはずがありません。
試合後のナダルから言葉を掛けられているワウリンカ選手の表情が凄く痛々しかったです。ワウリンカ本人は決勝という舞台でこんなプレイをして不甲斐ないという気持ちがかなり占めていそうな表情です。しかし、ワウリンカ選手が悪くないのは試合を見ればわかります。誰よりもナダルに対応できてましたが、このプレイぶりのナダルには誰も勝てません。今後またチャンスがあるでしょう。
クレーシーズンはまだ何試合か開催されますが、グレード1000以上のでのクレーの大会は全仏で終了し、今後は芝、ハードコートの試合に移っていきます。
クレーで活躍した選手が今後どのような活躍を見せるかは改めて振り返っていきたいと思います。