錦織選手の発言が弱気に・・・ 2017年後半戦展望、今後の失効ポイント
現在行われている2017ウインブルドン大会。日本の錦織圭選手は3回戦ロベルト・バウティスタ・アグート選手に敗れました。
試合内容でもチャンスを悉く逸すると、相手に流れが行き、またバウティスタが最後まで集中力を切らさないテニスを見せていたのもあり、内容的には完敗と言っても差しつかえない内容となってしまいました。
試合後 くやしさの滲む錦織選手
試合後「試合の前半にあったブレークチャンスで取れなかったのが響いた。徐々に焦っていってしまった。しかしバウティスタも良いプレイをしていたので、そこまで多くのチャンスはなかったように思う。」
「この取り切れない部分に対しては、早めにポイントが欲しかったというのもあるけど・・・、そういう焦りなのか、プレイの仕方なのか、それとも気持ちの持ちようなのか・・・、色々原因はあるとは思いますが・・」
「第3セットは相手を動かせて行けた、それによって良いテニスができるようになった感触はあった、でもそれは長くは続かなったですね。」
言葉の節々にこみ上げるくやしさとやりきれなさ、そして何故こうなってしまったのか・・と言わんばかりの後悔の念。それを探すのは錦織にしかできない事です。
しかし、チャンスに取り切れなければ相手は勇気を与えられて復活してしまうというのはよくある話です。今回に限ればバウティスタは落ち込むようなペースになる瞬間はあまりなかったように思います。
序盤からの低い変化の少ない弾道が胸元を抉る
バウティスタは低く変化の低いリターンを心がけたため、直線的に入ってくる低いリターンに錦織が苦労したのは明白です。そしてそれを技術的にやり切る程バウティスタはうまく、強い精神力を持ち、上位ランキングを維持している理由でもあります。これにより錦織の速い攻撃をかなり封殺する事に成功します。
低く胸元や対角にくるリターンを無理に返そうとすると処理を誤りやすく浮き球になりやすくなります。そうして焦って攻めた結果チャンスボールをバウティスタが前に詰めてボレーで沈められてしまいます。この試合そのような場面を数限りなく見せられました。
錦織選手もトップ選手ですから、そのような中でもバウティスタのリターンが甘くなる所を捉えたり、ストローク戦になった場合は持ち味を発揮し中盤までに9度のブレークチャンスを掴んではいるものの、バウティスタはその度に集中力を研ぎ澄ませます。方や錦織はブレークが欲しく前述した焦りからの浮き球を処理されたり、バックアウトのショットを繰り返してしまいました。
3rdセット、4thセットの入りは逆転勝利を予感させた
しかし、このままではいけないと思った錦織は、3rdセットは左右に動かすテニスでバウティスタを揺さぶり、それが故にベースライン上で転倒したりする場面も見られ、4thセットも序盤はそのようなテニスができていたように思います。4th早々にブレークした時にはこのまま逆転できるという雰囲気が漂いました。
しかし、それまでに1ポイントを取るために38フィートと運動量を必要とした試合で徐々に錦織の足首に疲労の色が濃くなってきます。ちなみにフェデラーは1ポイントを取るのに要するフィート数は20台です。ここはプレイスタイルによりますが、長いグランドスラムと芝の特性を考えてのプレイスタイルとも言えます。
こうなると錦織は早い攻撃を無理くりしようと焦りが出てきます。そしてそれこそがバウティスタの狙いでもありました。
左右に動かしてはいたものの、自分自身も左右に動く必要が生じ、そのためかバウティスタよりも消耗が早く、終盤は足も止まりました。そしてそれが今の錦織選手のフィジカルなのです。
技術ではなくフィジカル
フィジカルと言えばこの選手 ラファエル・ナダル
結局の所、体に負荷がかかるプレイスタイルに耐えうるフィジカルがまだ整っていないというのが現状の錦織選手の成績がくっすぶっている原因とみるのが普通ではないでしょうか。フェデラーのように早い攻撃で運動量を減らすか、ナダルのように屈強なフィジカルを作り上げるか、、方法は様々ですが、現状ですとまだセンスに頼るテニスという段階を抜け切れていないと感じます。トップ選手になるとセンスがあるのはもちろんそこに+α、+βなりの味付けがどうしても必要となります。
今の錦織選手はグランドスラムを戦い抜くフィジカル以前に、1試合を戦い抜くフィジカルにすら問題を抱えています。全仏3回戦のチョン選手、4回戦のベルダスコ戦、QFマレー戦、そしてウインブルドンのバウティスタ戦は全て終盤は足に来ています。まずはこの部分の改善は必須ではないでしょうか。
今後の錦織選手の失効ポイント
今後年末のファイナルツアーまでの錦織選手の失効ポイントは、
2225ポイント
これはかなり大きくなります。同順位を争ってる選手の中ではラオニッチやチリッチに次ぐ大きさです。
錦織が危惧する2桁順位落ち
「まだランキングはそこまで気にしません、流石にランク10を維持できなければ焦りますが(笑)」
そのランク10維持に向けては、現状楽観視はできない状況です。
錦織選手と近いランキングにいる選手での年末までの失効ポイントは、
チリッチ 2530
ラオニッチ 2785
ティエム 730
Aズべレフ 540
ツォンガ 1460
ディミトロフ 1335
ゴファン 965
特に脅威となるのはティエムとズべレフの失効の少なさです。
共に強烈なサーブを持つ一方、バックラインからの強打のティエムと、安定したストロークを持つズべレフのプレイスタイルは後半戦のハードコートとの相性は悪くありません。稼働試合が多く疲れが影響して落ちたティエムや、まだツアー経験の少なかったズべレフがこの1年で上位選手と認識されるまでに成長しました。また、怪我が無事に完治すれば粘り強いストローク力を持つゴファンも上昇する可能性を秘めています。
現状のポイントを考えても年末までには錦織はティエムやズべレフよりランキングが下になるとみるのが自然でしょう。それは錦織選手が昨年並みの活躍を見せたとしてもです。既にポイントを上回ってるティエムは当然として、まだ1000ポイント近く差があるズべレフにしても、マスターズのどれかの大会でSF進出を1つでも果たそうものであれば錦織を上回ってしまいます。今のズべレフであればそれは簡単に達成してしまうでしょう。
今後の錦織選手のモチベーション
トミック発言の問題もありましたが、それは他の選手にも言えます。いつそのような喪失状態になるかは誰にもわからないでしょう。今回のウインブルドン3回戦でそれまで負けた事のないバウティスタに完敗し、明らかにくやしさを見せた錦織は、その「悔しさ」が次の大会にすんなり向けば問題はないですが、そうならない場合もあるかもしれません。それは人間である以上は否定できない事です。
そういう喪失状態になるのは周りの過度な期待や要求や締め付けなど、あるいはプレイベートに口出しをされたり、かかわったりする事にストレスを抱えるようになるなど、要因はいくらでもあります。試合に勝てなくなった時の絶望感などもそうでしょう。ジョコビッチも陥ったわけです。ジョコビッチは自らすべてを変えていくことにより少しずつ少しずつ前進している感があります。しかし、これは言う程簡単な事ではないのです。
錦織選手は天然な性格で自分の思う事に対して過度なプレッシャーを自ら回避できるような性格と見てますのでその部分に関しては心配していませんし、彼女問題も本人は全く意に介さないでしょうし、それでよいと思います。とは言え自分がそうであっても、周りがそうでない場合は錦織選手にもストレスがかかってきます。錦織選手を取り巻く周りももう少し錦織選手に協力的になる必要があるとは感じます。
年初に取り組んでいたはずのサーブの改善はどこに・・・
ただし、そういう問題があるのとはまた別に、技術的な問題として、年初に取り組んでいたサーブの改善が完全に止まってしまっているように見えます。
アルゼンチンオープンのシュワルツマン戦でも披露した超スライスサーブ
ブリスベンで披露した錦織のセンターラインを急激に曲がるスライスサーブはモノにすればかなりの武器になるとみていたサーブでしたが、全豪オープンを過ぎてクレーシーズンに入ると全く使用しなくなりました。それどころか1stサーブin率は徐々に悪くなっていってます。
錦織選手の今後
このように現状錦織選手が後半戦を迎えるに当たり、様々な問題があるように思います。
・初敗戦のバウティスタ戦のショックと、その払拭方法
・錦織選手の周辺のストレス解消
・グランドスラムを戦い抜く「1試合単位」でのフィジカル
・ツアーファイナルを本気で狙いに行くかどうか
・サーブの改善の棚上げをどうするか
今後上記に見る問題がどのようになっていくかは、個人的に興味を持って見つめていきたい所です。