2017全英ウインブルドン ベスト16 ナダル死闘の末敗れる、各試合白熱の攻防
2017Wimbledonは2ndウイークに突入し、7月10(月)男女のシングルス8試合ずつが行われます。ウインブルドンは2ndウイークからは基本的に男女が1日置いての試合となりますが、初日だけは男女の試合全てが行われます。そのため、2ndウイーク初日はあまりにも好カードが詰め込まれた感じであり、視聴者にとっては非常に勿体なく思う所ではありますが、これも伝統という言葉で片付けられています。
しかし、そのためにライブ視聴はかなり限定されたものとなり、好カードであっても選手の知名度が低いと放送されない試合も沢山出てきてしまうという事になります。
男子シングルスはいずれも好カード揃いですが、中でも実力が伯仲しているラオニッチ対ズべレフ、ベルディヒ対ティエムの試合はオンデマンド対応の予定です。
ベスト16 男子シングルス放送予定
アンディー・マレー 対 ブノワ・ペール
ロジャー・フェデラー 対 グレゴリー・ディミトロフ
ライブ中継されるのはこの2試合のみという発表がされております。WOWOWオンデマンドでは何試合か放送されると思いますが、かなり流動的になるとの事です。少なくても、クエリー対アンダーソンのシード外対決はオンデマンドでも放送されない可能性は高いです。
試合オーダー
アンディー・マレー 対 ブノワ・ペール
センターコート第2試合 23;00予定
ロジャー・フェデラー 対 グレゴリー・ディミトロフ
センターコート第3試合 25;30予定
ラファエル・ナダル 対 ジレ・ミュラー
ナンバー1コート第2試合 23;00予定
アドリアン・マナリノ 対 ノバク・ジョコビッチ
ナンバー1コート第3試合 25;30予定
ミロシュ・ラオニッチ 対 アレクサンダー・ズべレフ
ナンバー2コート第3試合 23;30予定
ドミニク・ティエム 対 トーマス・ベルディヒ
ナンバー3コート第3試合 23;30予定
ロベルト・バウティスタ・アグート 対 マリン・チリッチ
ナンバー12コート第2試合 21;30予定
サム・クエリー 対 ケヴィン・アンダーソン
ナンバー18コート第2試合 21;30予定
*時間は対戦相手との強度からの推定です
男子シングルスのベスト16の試合は全てが女子シングルスの後の第二試合以降の開催となり、開始時間がコート毎にかなり幅が出てくる事が予想されます。
センターコートからナンバー18コートまでとグレートに幅があり、やはりというか、注目度順にコートが振り分けられています。コート12,18もチャレンジシステムが使えるコートですので試合に影響はないでしょうが、観客動員数がかなり少なく予想され、かつ芝の状態も上位コート程整備はされておらず、少し気の毒な所です。
そして、WOWOWオンデマンドはコート1~3を主に放送との事で、最後の2試合は録画放送予定もありません・・・・。バウティスタ対チリッチの試合は錦織選手が敗れた相手というのもあり、バウティスタがとこまでチリッチに対抗できるか見たいテニスファンもいるとは思いますが、このような事情から視聴は難しいと言わざるを得ません。
視聴試合展望
視聴試合のみを記載予定
マレー 対 ペール
1st | 2nd | 3rd | result | |
マレー | 7 | 6 | 6 | 3 |
ペール | 6(1) | 4 | 4 | 0 |
放送予定にあるこの試合は、WOWOWのオンデマンド対応でないにもかかわらず2セット目中盤まで放送されていませんでした。放送されていた女子シングルスの試合はオンデマンドでも視聴できる試合です。
試合は、1stセット、ペールのバックハンドが立て続けに決まり、ペールがブレーク先行する流れも自滅の形でブレークバックされ、タイブレークでもやや集中力の欠けるプレイを見せ、7-1と圧倒され、1stセットはマレーが先取する。
2ndセット以降も一進一退の攻防が続くも勝負所でペールの雑さとマレーの粘りにより、マレーがストレート勝ちを収めました。同時間に行っていた他の試合が伯仲した試合となっており、流し見程度での観戦となりました。。。
勝ちはしたもののマレーのテニスの内容はそれ程のものでもなく、他のBIG4に比べるとまだまだ不安の残るできに終始しました。
次の対戦相手はアンダーソンをフルセットの末に下したクエリーとなりました。他のブロックに比べるとかなり恵まれている展開ですが、ワウリンカが初戦敗退した恩恵をあずかる事になります。
フェデラー 対 ディミトロフ
1st | 2nd | 3rd | result | |
フェデラー | 6 | 6 | 6 | 3 |
ディミトロフ | 4 | 2 | 4 | 0 |
センターコートで行われた、フェデラー対ベビーフェデラーの対決。共に劇術的なバックハンドの綺麗なフォームを持ち、魅力的な試合になる・・と思われました。
1stセット。フェデラーはこれまでのような序盤のもたつきが見られずに2ndウイークモードに入る堅実さを見せると、第9ゲーム、ディミトロフがフォアハンドショットを立て続けにミスしフェデラーがブレークすると、そのままゲームカウント6-4でフェデラーが制する。
この時点で観客も試合が決まったかのような安堵感が流れたのが印象的。(以降はこちらの試合も流し見程度となってしまうのですが・・)
2ndセットに入ると試合展開に焦りを見せるディミトロフはダブルフォルトを立て続けに喫して崩れていき、このセットもフェデラーが6-2で制する。フェデラーはここまでアンフォーストエラーが4つでブレークポイントすら与えない完璧な内容でディミトロフの心を折りに掛かりました。
3rdセット、このセットもフェデラーがブレークしたものの、ディミトロフも意地を見せてのブレークバックをする。しかし、そのリターンゲームで15-40と2つのブレークポイントを握られると、ディミトロフがこの試合全くといっていい程さえがないフォアハンドショットをミスし、フェデラーがサービンフォーザマッチを迎える。
そのSFMで簡単に40-0とすると、最後はディミトロフのフォアショットが決まらずにフェデラーが僅か97分で快勝しました。
センターコート2試合は他の試合に比べると淡泊に勝つべき選手が勝ったという印象でした。それ程その他の試合が激戦で見ごたえ十分な展開でした。逆に言うならば、WOWOWオンデマンドを視聴できない人が多い現状ではその見ごたえのある試合がほとんどの人が見れなかったという意味でも、2ndウイーク初日のこの詰め込み試合は興行的に改善の余地があると切に思いました。
ナダル 対 ミュラー
1st | 2nd | 3rd | 4th | 5th | result | |
ナダル | 3 | 4 | 6 | 6 | 13 | 2 |
ミュラー | 6 | 6 | 3 | 4 | 15 | 3 |
この試合はかなりの死闘となりました。
1st、2ndセットともにいつもナダルのような若干緩い立ち上がりをするとミュラーがサーブを軸にしたドロップやサイドへ抜くパッシングショットが冴え、あっという間に2セットアップする。
しかし、ナダルはそこから粘りを見せ2セットオールまで巻き返す。
ファイナルセットの死闘
ファイナルセットはお互いの意地がぶつかり合う消耗戦となる。その中でもミュラーは比較的楽にキープが進み、ナダルはミュラーの冷静なプレーに大苦戦する。
6-6でサドンデスに突入したこの試合は、ポイントを挙げるたびに雄叫びやオーバーリアクションでガッツポーズするナダルに対して、マッチポイントを握っても顔色ひとつ変えずに淡々と静かにプレイするミュラーと好対照なコントラストが印象的。
9-9で迎えたゲーム、ナダルは立て続けにチャレンジを使い、共にチャンレンジ失敗し、チャレンジの権利を失う。すると、その後のプレイでチャレンジしたくなるような際どいショットが続き、ナダルも手を挙げて感情を露にする。
9-10、ナダルが2度のマッチポイントを握られるも深いクロスや前に出るプレイ、更には角度のあるネット際のクロスなどで必死のキープを見せる。
10-11、ナダルのサービス、夕日が目に入るとのナダルのクレームで観客がクロスを掛けて対応するという一幕がある。そこから、ミュラーの左右の揺さぶりで0-30と再三、再四に渡りナダルはピンチの状況となる。ミュラーはしぶとくスライスで返すもこれがアウトになる。そこからナダルは巻き返し、ミュラーはリターンを打ち上げるなどしてこのゲームもキープする。
ミュラーはドロップのミスやサーブのリターンを打ち上げるなど明らかに疲れが見て取れる。
23ゲーム、ミュラーのサービス。ナダルがポイント先行するも、ミュラーは相変わらず表情一つ変えず淡々とプレイし、キープする。
24ゲーム 後サーブで常にプレッシャーにさらされるナダル。ポイント先制するもミュラーのリターンエースを喰らう。更に前に出てのクロスでポイントを有利にするミュラー。しかしサービスエースのナダル。更には2ndでワイドサーブでエースを取る。そのままこのゲームをキープし、ナダルにとって待望の3チャレンジの権利が復活する。
27ゲーム 体力をセーブし、極力無駄な動作をしないミュラーに対して、飛び跳ね、左右に屈伸したりしてまだまだ動ける様子を見せつけるナダル。しかし、ミュラーはネットプレイを駆使して静かにキープする。
28ゲーム 13-14で迎えるナダルのサービス。ミュラーがナダルのショットに対応し0-30とナダルを追い詰める。そしてナダルがリターンを大きく打ち上げて、通算5度目、2つのマッチポイントをミュラーが握る。
そして、ラリーでの応酬の中、ナダルのリターンがバックアウトになり、4時間48分にもわたる試合をミュラーが制しました。ファイナルセットだけで実に2時間を超す激闘となりました。
ミュラーは勝利した瞬間、顔色一つかえずその場に立ち尽くし、10秒間程時が止まったかのように空を見上げ、そののちに少しばかりの笑みを浮かべてナダルと健闘をたたえ合い、共に並んでコートを去ります。
ミュラー「正直に言うととても疲れたよ。2セットを先取して、2セット取り返されたわけだけど、全く悪いプレイじゃなかったんだよ、ナダルはそれ程の選手なんだよ。しかし、、、本当に今は実感がないよ。次の試合の事?今は本当に考えられない。とにかく疲れたよ。」
スタッツ
スタッツだけを見るとナダルのミスの少なさやブレークポイントの多さからしてナダルが押していたように見えますが、試合的にはどちらかと言えばミュラーが支配していたように感じます。
特にファイナルセットのサドンデスからはミュラーは楽にキープし、ナダルはキープに苦労しました。ミュラーは攻めるときと凌ぐときのバランスが良く、かつ静かに冷静に対応しました。
一方のナダルは感情で自分を鼓舞し、またそれを相手に見せつける事によりミュラーのペースを崩そうとしましたが、ミュラーは全く崩れる事がありませんでした。その上で34歳という年齢もあり、無駄な体力を使わず自分のプレイに徹しました。ナダルも必死に食い下がりましたが最後は根負けした形です。
どちらもピンチでは素晴らしいショットやサーブを見せここまでもつれさせました。非常に見ごたえがあるものの、最後は視聴者もかなりの疲労があったのではないでしょうか。
ミュラーはQFでは英気十分のチリッチとの対戦が待っています。非常に厳しい対戦となるでしょう。
ラオニッチ 対 アレクサンダー・ズべレフ
1st | 2nd | 3rd | 4th | 5th | result | |
ラオニッチ | 4 | 7 | 4 | 7 | 6 | 3 |
Aズべレフ | 6 | 5 | 6 | 5 | 1 | 2 |
こちらも死闘となった、ラオニッチ対ズべレフ。
序盤はズべレフがラオニッチを圧倒する。サーブゲームでも無風状態、更にラオニッチの高速サーブをことごとく拾いチャンスの山を作るとブレークに成功し、1stセットをズべレフが取る。
2ndセットもいきなりズべレフがブレークを取り、試合を一気に決めるかに思われたものの、ラオニッチはそれまで淡泊だったストロークのラリーでスライス多用の戦術に切り替えると、徐々に流れを引き寄せ、連続ブレークでこのセットを土壇場で取り返しセットオールとなる。
3rdセットに入ると序盤はラオニッチが押すも、ここで崩れないのがここ最近の成長したズべレフで、しぶといスライスにズべレフもスライスやより深いショットで対応すると、ストローク精度で勝るズべレフがラオニッチの攻め急ぎを誘い、このセットを6-4で取り、セットカウント2-1と勝利に向かう。
4thセット。このセットもズべレフは落とすようなプレイではなかったものの、再三のチャンスで勝負を焦ったショットをミスで立て続けに逃すと、終盤の12ゲーム目に僅かなチャンスをラオニッチに物にされてセットオールとなる。
ファイナルセットに入ると体力が限界に近付いてきたズべレフはそれまで対応できていたラオニッチの1stサーブに全く歯が立たなくなる。すると、ラオニッチはそこから勇気を得て前に出るプレイを多用しズべレフにプレッシャーをかけてブレークに成功する。
第5ゲーム、ズべレフも最後の反抗とばかりに力を振り絞り再三のブレークポイントを奪うも、肝心な所でのショットに精度を欠き、結局このゲームもキープされると、力尽きたズべレフは何もすることができずに、ラオニッチが更にブレークを重ね、ゲームカウント6-1でファイナルセットを取ったラオニッチが勝利しました。
スタッツ
ズべレフは序盤までに大量のチャンスがありながら、その都度チャンスを逃してしまった事によりラオニッチに復活の機会を与えてしまいました。
序盤はストロークに冴えが無かったラオニッチはスライスを起点にしてのネットプレイなどで徐々にプレイの幅を広げつつズべレフのサーブ速度がどんどん落ちてくる後半はストロークでもズべレフに打ち負けない展開となり、そのまま勝利しました。
ズべレフは序盤はラオニッチの高速サーブに対応し、ほとんどエースを許さず、エース数でラオニッチを上回るなどのポテンシャルを見せつけましたが、5セットマッチとなると、全豪のナダル戦のようにフィジカルパフォーマンスが極端に落ちてしまい、経験の差が出たという所でしょうか。終盤はサーブに対応できなくなりました。
とは言え、悪いパフォーマンスではなかったのも確かで、年間で5キロずつの増量計画をしているとの事で、今後はフィジカル面での課題もクリアになっていくことでしょう。
勝利したラオニッチは盤石の勝利で優勝へひた走るフェデラーに挑戦します。昨年はSFで破っていますが今と昨年ではフェデラーの準備の違いが明らかであり、フェデラー有利に試合が運ぶと目されます。
その他試合雑感
この日はこれらの試合の他、ティエム対ベルディヒ戦、アンダーソン対クエリー戦もフルセットの激闘になり、視聴できないのが残念というぐらいのボリュームのある試合が盛りだくさんでした。
その一方で、錦織選手を破ったバウティスタとチリッチの試合は1つのブレークも湯退らない圧巻でチリッチが、6-2,6-2,6-2で制しました。相性も考えれば錦織選手は勝ち上がっても厳しい現実が待ってたと言わざるを得ません。
ジョコビッチの試合は順延
この日は男女共に白熱のフルセットマッチが相次ぎ、ナンバー1コートで予定されていたジョコビッチ対マナリノの試合は、ナダル対ミュラー戦がサスペンデット間近の激闘になった事もあり、ナダル対ミュラーのファイナルセット途中で順延が決定しました。
試合は7月11(火)20;00からセンターコート第1試合で行われる予定となっています。
WOWOWの放送予定は20;55となっておりますが、この試合の放送に対応できるかどうかは今後の視聴者の対応の変化に重要な局面を与えるでしょう。