フェデラー8回目の優勝 対チリッチ 2017全英ウインブルドン F決勝 試合後雑感
2017年Wimbledonも残す所決勝のみとなりました。クエリーを力でねじ伏せた形のチリッチとこれまでストレート勝ちで来ている盤石のフェデラー。大会前からこの2人が本命視され、その通りの決勝となったという印象でしょうか。
フェデラーに全仏のナダルを重ねる視聴者は多いと思いますし、共通点も多いです。しかし、プレイの絶望度で言えば全仏のナダルの方がまだ威圧感があった感じです。フェデラーは早い攻めだけにミスもそれなりにあり、そこを突ける選手がいませんでした。チリッチはしぶとくストロークで対応できるかどうかにかかってくるでしょう。
1st | 2nd | 3rd | 4th | 5th | Result | |
フェデラー | 6 | 6 | 6 | 3 | ||
チリッチ | 3 | 1 | 4 | 0 |
1stセット
1ゲーム チリッチのサーブ
お互いにやや硬い立ち上がりも、チリッチがよくリターンを返し、両者ウイナー無しでチリッチのキープでスタートする。
2ゲーム フェデラーのサーブ
チリッチの深いリターンでフェデラーが不利なカウントになるも、態勢を崩してのスマッシュを決め、早くも「ホメアツ!」の雄叫びを上げ、フェデラーがキープ。
3ゲーム チリッチのサーブ
チリッチがラリーでも攻勢を見せキープに成功する。
4ゲーム フェデラーのサーブ
フェデラーがダブルフォルトや、リターンをネットにかけるなどして、この試合初めてのブレークポイントをチリッチが握るも、2ndサーブのリターンをネットに掛けるなどし、フェデラーが雄叫びを挙げるキープ。
5ゲーム チリッチのサーブ
お互いネットに出てのボレーの応酬でフェデラーがコート外に追いやられるもリターンがコートを捉えるなどのスーパープレイが光ると、チリッチのリターンが大きくバックアウトしフェデラーが3つのブレークポイントを握ると、フェデラーの低いバックハンドリターンをチリッチがネットにかけ、フェデラーがブレークに成功する。
6ゲーム フェデラーのサーブ
お互い早いいいラリーが線審アウトの判定に主審のリプレイザポイントでチリッチが若干集中力を切らし、そのままフェデラーの攻めにチリッチがついていけずラブゲームキープする。
7ゲーム チリッチのサーブ
あっさりチリッチがキープするかと思いきやフェデラーの粘りに合い、更にはチリッチがダブルフォルトを犯してデュースとなる。そこからチリッチはサーブで押し何とかキープする。
8ゲーム フェデラーのサーブ
フェデラーのセンターやワイドのサーブにチリッチは翻弄されフェデラーがまたもラブゲームキープで試合を完全に支配するキープを果たす。
9ゲーム チリッチのサーブ
チリッチの30-0から立て続けにアウトショット、更にはフェデラーのパッシングショットが決まりフェデラーが2度のセットポイントを握ると、チリッチがダブルフォルトを喫し、フェデラーがゲームカウント6-3でセット先行します。
チリッチはあまりの不甲斐なさにラケットを叩きつけてしまう。チリッチとしては非常に珍しい行動である。
1st総括
序盤固さのあった両者だが、そこから好勝負を予感させる素晴らしいラリーが続くも、徐々にフェデラーが流れを掴みブレーク。更にその次のゲームでチリッチ有利のストロークを止められて水を差されてからは圧倒的なフェデラーペースとなっています。
チリッチはポイントを焦ってのバックアウトを繰り返している状態ですので、じっくりおちついてプレイする必要がありそうですが、うまくい可能性は低く、心が折れている部分さえ見られます。
2ndセット
1ゲーム フェデラーのサービス
チリッチが1度もフェデラーのサーブを返せずのラブゲームキープで会場は騒然となります。試合が決まったかのような雰囲気です。
2ゲーム チリッチのサービス
チリッチのサーブが入るようになるも、焦りからバックアウトを連発し、またもフェデラーがブレークポイントを握る。更にはチリッチのリターンがサイドアウトとなり、フェデラーが優勝を決定づけるブレークを奪う。
3ゲーム フェデラーのサービス
いいリターンになっても焦ってのミスを繰り返し、フェデラーがキープする。
するとここでチリッチがベンチに戻る顔を真っ赤にして泣く場面が。体の痛みはなく、メンタル的に追い詰められての涙に見えます。立ち直れるでしょうか。
4ゲーム チリッチのサービス
チリッチがポイントを取ると観客もチリッチに声援を送り後押しをする。更にはボディーへのリターンに反応し、チリッチが必死のキープを見せる。
5ゲーム フェデラーのサービス
フェデラーが左右に打ち分け、必死に調子を戻そうとするチリッチに隙を与えずに楽にキープする。
6ゲーム チリッチのサービス
あっさり勝負を付く名残惜しさから観客はチリッチよりの声援となるも、フェデラーは厳しいリターンを見せデュースに。フェデラーのリターンエースなどで2度のブレークポイントを握ると、チリッチのリターンがサイドアウトになり、フェデラーが2ブレークアップとなる。
7ゲーム フェデラーのサービンフォーザセット
コードボールにも落ち着いて対応するフェデラー。そのままチリッチは無抵抗のままラブゲームキープでフェデラーがこのセット6-1で取り、優勝に大手を掛ける。
2ndセット総括
ここでチリッチは足のテーピングを取り換える。1stセット時にネットでの攻めの応酬の時にチリッチが転んだのが影響しているのかもしれません。
いずれにしても体力的にもメンタル的にもかなり厳しい状況のチリッチに打開策は残されていないでしょう。
3rdセット
1ゲーム チリッチのサービス
フェデラーに1stサービスを返されるも必死に食らいつき、なんとかキープする。
2ゲーム フェデラーのサービス
速いポイントが欲しいチリッチを尻目に落ち着いたプレイで楽にキープする。
3ゲーム チリッチのサービス
0-30となり厳しい展開。ラリーでしぶとく食らいつくも、フェデラーの華麗なバックハンドサイドリターンが決まりデュースに。1stサーブが中々入らず苦労するチリッチは、弱気な表情を見せるもサーブで崩し逆を付くショットなどを決めて必死のキープを見せる。
4ゲーム フェデラーのサービス
サーブで外に追いやり、クロスに強烈なショットを決めるフェデラー。しかし、チリッチはフェデラーのサーブに対応してしっかりとしたリターンでフェデラーのネットを誘いデュースに持ち込む。しかし、ここでサービスエースを決めるなどしフェデラーがキープする。
5ゲーム チリッチのサービス
サーブで攻めるチリッチはコードボールにも助けられるなどし、最後はサービスエースでチリッチも雄叫びを上げて奮起するキープを果たす。
6ゲーム フェデラーのサービス
サーブを打つまでの時間、ポイントを取ってから間髪おかずにサーブを打ち1分と立たずにラブゲームキープし、チリッチの心を再び折に掛る。
7ゲーム チリッチのサービス
サイドへのリターンがはずれ15-30となる。更にはチャンスボールをネットにかけて2つのブレークポイントを握られると、チリッチがリターンをネットにかけ、フェデラーが勝負を決めるブレークを果たす。
8ゲーム フェデラーのサービス
チリッチがドロップショットを見せるも、フェデラーはオープンコートからのストレートを決めるなど盤石。楽々とキープする。
9ゲーム チリッチのサービス
フェデラーの見事なリターンにスマッシュボレーで対応するなど良いプレイを見せチリッチが意地のキープを見せる。
10ゲーム フェデラーのサービンフォーザチャンピオンシップ
0-15 ラリーからのリターンをバックアウトでチリッチが先行ポイント
15-15 フェデラーのサーブが決まる
30-15 ワイドサーブが決まる。ホメアツァーの大きな雄叫び
40-15 サーブでポイントを取り、2つのチャンピオンシップポイント
40-30 チリッチがリターンで粘り、フェデラーがサイドアウト
C サービスエースで締めくくる
フェデラーが決勝もストレート勝ちで、オールストレート勝ちの快挙を達成しました。
試合の分岐点 1stセットの第6ゲーム
試合の入りはフェデラーよりチリッチの方が良く見え、ストロークでは主導権を握り、サーブでの対応を如何にするかとういう段階でした。
1stセット第5ゲームをブレークされたもののチリッチはそれほど動きを鈍らす事はなく、第6ゲームのフェデラーのサービスでもストロークでチリッチはフェデラーを押し込み優勢にラリーを進めていましたが、分岐点となったのは、副審のアウトを主審のオーバールールで覆された所にあるでしょう。
テレビ画面から見る限りはアウトよりな感覚がありましたがチリッチはチャレンジをしませんでした。そのままプレイを続けていればフェデラーは態勢を崩していただけにチリッチのポイントになった可能性が高いです。
ここからはチリッチは一気にメンタルが崩れたかのようにそれまでの粘り強いリターンが影をひそめてしまいました。
ウインブルドン全試合ストレートの史上初の快挙
結果的に全仏のナダルと同じように、決勝で相手の心を折るテニスを見せての完勝でフェデラーが優勝しました。
チリッチの高速サーブにもボディーへリターンし、チリッチに容易なリターンを許さない当りに強さを感じました。
そして、ウインブルドン全試合ストレート勝ちは史上初の快挙という事です。36歳を目前に控えてのこれはかなりの偉業となりました。
また、前大会のハレから数えても12試合連続のストレート勝ちとなります。誰もこの記録を破れないのではないでしょうか。
試合後インタビュー
チリッチ「今日は大変厳しかったです。今まで諦めた試合なんてありませんでしたが、今日は厳しかったです。みんなありがとう。(感情を押さえつけながら)本当に今日は厳しかったですが、またここに戻ってきて今度こそいい成績を残したいです。」
フェデラー「チリッチはヒーローです。準優勝おめでとう。決勝で素晴らしいプレイをした彼には残酷な結果でしょうが、また違う結果の日もあるでしょう。私に関していえば休養をとったのが良かったかもしれないね(笑)。1つのセットを落とさないで勝てたのは信じられません。決勝で戦えると信じれない時もあったものの、ブランクを感じてはいましたが、信じなければ始まらないので、やっぱり信じる事にしました。そして成し遂げました。今日マリン(チリッチ)とここで勝負できたのは素晴らしい事です。センターコートは満席で素晴らしい雰囲気です。また来年も戻ってきます。僕の息子たちは何が起きてるかわからないでしょうね(笑)。いい遊び場と思ってるかもね(笑)。娘たちは少しは理解してるでしょうが、また今度話さないとね(笑)とにかく素晴らしい時でした。ありがとう。」
大会終了後コメント
チリッチ「涙に関していえば、準決勝の時から既にあったマメが悪化したんだ。本当にひどい状態だったよ。足の皮膚から水が出てきてしまっていた。試合までにドクターはできる事をやってくれたが治らなかったんだ。でも、結局のところはそれも含めて精神的な感情が込み上げてきたのが原因だよ。それだけロジャーのプレイは凄まじかった。」
「観客には本当に助けられた、それがなければ試合を続けられなかった。そして、そこからネットに出るプレイを増やしたよ。何かを変えなければいけなかったんだ。ロジャーを揺さぶる何かをするためにできる事はやったと思う。」
このコメントを見ると、足のマメ(テーピングの張り直しの場面があったが、これが原因)に起因する精神的なストレスが極限に達した事により肩を震わせるような状態となったという事です。しかしそれでも前に進まなければいけない、状態を変えなければいけないと必死に頭を回転させなければならず、立ち止まる事は許されません。スポーツに限らず、仕事でのストレスが極まるとこの状態は経験のある人も多いと思います。
これに対して、フェデラーは
フェデラー「彼が涙を流した事は知らなかった。もし見てしまっていたらプレイに影響が出ていたかもしれない。彼はナイスガイだからね。」
映像で見る限りはフェデラーは確かにチリッチ陣営の方は全く見ていませんでした。決勝なので自分のプレイに集中するという事が大事とわかっています。とは言え、フェデラーはチリッチに良いプレイが出た時は「リターンできるボールも見送っていました」。その場面は最低でも3度はありました。
つまりはフェデラーは試合展開にはそれができる程の余裕があったとみています。良いプレイをする選手に勝ってこその優勝だと彼は思っている節があります。明らかに動きの質が落ちたチリッチを励まそうとフェデラーはしてたように思います。しかし、それでも重要な場面が来るとそのポイントを渡すことはありませんでした。見せ場は作らせてもそれ以上勝負にかかわる所では勝負師としての顔を捨てませんでした。
何れにしても勝負強さと、華麗なプレイ、自身のサービスゲームは平均しても2分とかからぬ速さを見せたフェデラー。今後のハードコートシーズンも彼を破るのは容易ではないでしょう。若手選手はどのように対応してくるのか、あるいはビック4、特にジョコビッチ、ナダルが今後離脱の可能性を秘めている以上はナダルがどれ程フェデラーに対抗できるかどうか、また錦織選手を含む日本人選手の活躍などに興味が移っていきます。