錦織の自信の無さが勝敗を分ける まさかの大逆転 2017モントリオールマスターズ 2回戦
8月10日1;30に行われた錦織対ガエル・モンフィス選手との1戦。錦織選手が信じられないような敗戦を喫してしまいました。
試合内容
1stセット、お互いにやや集中力が散漫となり、共に簡単にブレークを喫しあう展開。
そこから錦織は徐々にストロークの調子を取り戻したのに対してモンフィスは両膝の怪我の影響かその部分を気にする仕草が何度も見られる。
更に錦織が先にブレークするも、錦織のSFMで全体的に攻めのショットがなくなり、かつダブルフォルトなどもありブレークバックされタイブレークに。
タイブレークではモンフィスの自滅ともいえるプレイから錦織がかろうじてセットを取る。
2ndセットも先サーブの錦織が先行ブレークし有利な状況を作るも、第5ゲームでブレークバックされる。しかし、次のゲームでモンフィスがリターンをミスし再び錦織がブレークし、第7ゲームを錦織がキープし、ゲームカウント5-2とする。
所がここからモンフィスはアウト覚悟の攻撃的リターンを繰り出すと錦織は防戦一方に、更にはポイントが欲しくネットに出て抜かれるなどの焦りが見られ5連続でゲームを落として逆転でセットオールとなる。
ファイナルセットは引き締め直した両者が楽にキープを繰り返すも、第6ゲームの錦織のブレークポイントでまたもミスによりチャンスを逃す。しかし第8ゲームブレークに成功する。
迎えた第9ゲームのサービンフォーザマッチ。ポイント先行するもとらえきれずにいると大きなロブショットを決められてブレークポイントを握られる。更にはモンフィスが華麗に打ち抜き土壇場でブレークバックされる。
タイブレークでは互いに撃ち合うもショットに正確性のある錦織がリードし6-2で4つのマッチポイントを握る。しかしここからモンフィスがエラー覚悟の強打をライン際に次々と決めて観客を完全に味方に付けると錦織は攻めるきる事ができない。
モンフィスはほとんどのショットが捨て身の威力あるショットで錦織からポイントを奪い続けてついにモンフィスにマッチポイントを握られると、最後も錦織のリターンが甘くモンフィスに華麗に撃ち抜かれてモンフィスが大逆転勝利を飾りました。
ストレート勝利もありえた展開から錦織は迷える森へ・・
上記スタッツ以外にも
トータルポイント 錦織 116 対 108 モンフィス
トータルでは錦織選手が多くポイントを取っていました。簡単なキープの数で言えば錦織の方が多かったのが原因です。全体的に見れば錦織のプレイはそこまで悪いものではなかったのです。
しかし、それでも敗れてしまいました。ポイントも多く取り、エース数はほぼ互角でエラーは相手が多いのにもかかわらずです。
錦織選手は今回モンフィス選手を見た目上で大きく3回追い詰めました。
1度目は2ndセットキープ後に5-2のゲームカウント
2度目は3rdセットブレーク後に5-3のゲームカウントでのサービンフォーザマッチ
3度目はタイブレークでのカウント6-2です。
この3度のうち、1,2度目は1ブレークアップで見た目程大きなリードではないものの、試合展開からすればその1ブレーク差は大きいはずの展開でした。そして何よりも3度目のタイブレークでの6-2は言わずもながら大きなリードです。相手は1ミスで終了なのです。しかし実際は全て凌がれて、モンフィスに訪れたマッチポイント1回で決められてしまいました。
この負け方はいう間でもなく堪えます。モンフィス選手が勝利後錦織をフォローしているのでもわかる通り、精神的なショックは相当な物でしょう。敗戦後の錦織選手は目立った発言をしていませんが、推して知るべしでしょう。
しかし、そのどのチャンスでも錦織選手は守勢に回ってしまいました。攻撃的なテニスを見せながらチャンスでは守勢となる・・・これは錦織選手が既に言及してる「最近は少し自信がなくなってる」という言葉を象徴するようなプレイぶりでした。それでいてダブルフォルトが重要な局面で出てしまいました。2ndでダブルファーストを狙ったわけでもありません。置きに行ったサーブがダブルフォルトになってしまうのです。こうなると更にもっと動揺してしまうのは容易に想像できます。
このダブルフォルトの連鎖からストロークでも積極性が失われてしまったという事は言えると思います。通常の状態ではしっかり強いリターン打てていたわけですから「明らかにメンタルの問題」です。
前の記事でも言及していましたが、この自信を取り戻すのにはトップ選手としっかりテニスができるという事を確認する事です。勝っても負けてもいいテニスができれば気持ちは絶対変わると思います。ワシントンオープンでズべレフに完敗したアンダーソン選手ですが「試合内容には満足している」という言葉を残しました。実際アンダーソン選手がミスをしたわけでなくズべレフが仕上がった試合でした。結局の所勝ち負けよりも上位選手に実力を出し切れるというのは非常に大事だという事です。
今の錦織選手は上位選手と当たる前に負けてしまうのでその点で自信がどうしても持てなくなります。全仏ではマレー選手とも戦いましたがあの試合は錦織選手がチャンスを手放した・・つまりは良いテニスで上位選手に通用した・・という試合ではなく、まずはそこから・・錦織選手にはそこでの自信が絶対的に必要と強く感じます。そういう意味で今回のQFでのフェデラーとの対戦のドローは悪くないドローだと思っていたのですが・・・。。こんな事になってしまいました。
錦織がどう考えるか
大きなショックを与えられた錦織ですが、幸いというか、ラオニッチやツォンガ、ゴファンなどのランキング近辺の選手も続々と敗退しベルディヒは怪我の影響で出場を回避しています。ディミトロフもかなり苦戦しての勝利です。つまりは同じシードランキングで次のシンシナティーマスターズを迎える事がほぼ確実です。気持ちを切り替えられるとしたらそこでしょうか。自分だけじゃないと思える気分になれるような周りの結果。これを錦織選手はどうとらえるでしょうか。
波乱続出のモントリオール
このモントリオールはトップ8選手以外は1回戦から試合を行っており、シード選手が次々と姿を消しています。
ラオニッチ 地元開催もあって怪我の具合が治らず強行出場したものの、サーブのスピードは出るもののストロークが安定せずマナリノがよくこの高速サーブを拾ったのもありストレートの完敗を喫しました。本人は地元大会でなければ欠場していた旨を発言しているため、次のシンシナティースキップの可能性すらありそうです。
ティエム 最小兵でありながらランキング34位と高い実力を誇るシュワルツマンに粘り負けしました。勝つチャンスも負けるピンチもありましたが、チャンスの数ではティエムの方が多かったものの、ことごとくミスを犯してしまいました。今まで以上に試合中に口数が多く、自分自信のテニスに迷いはないものの空回りしている印象です。
ツォンガ ツォンガ選手も土壇場での自信を失っているのかもしれません。全仏、全豪に続いて今大会でも終盤イーブンからブレークを許しての負けが続いてます。終盤での力弱さが際立ち自信も失っている感があります。逆にクエリーは全仏でもSF進出しメキシコ大会でも優勝と、ポイント的にはツアーファイナルを十分狙えるポイントを稼いでいます。
デルポトロ 怪我の具合が思わしくないのか地元のシャボパロフ選手にストレートで敗戦しました。フォアの威力も落ちておりまたもツアー離脱も現実味を帯びています。
ゴファン 復帰後3大会目ながらまだ2勝で試合内容も苦戦を強いられまだまだ調子が戻っていないゴファンは韓国のチョンヒョン選手に終始押されてストレート負けしてしまいました。終盤はやや粘りを見せたものの切れ味あるストロークを復活させるにはまだ時間が必要そうです。
早くもビックカード実現
モントリオール3回戦では早くもビックカード実現です。
キリオス 対 アレクサンダー・ズべレフ
同世代の若手の一騎打ち。キリオスは怪我や肉親の不幸によりメンタルバランスが大きく崩れていましたがモントリオールでは終始気迫と遊び心の入ったプレイが復活して観客も大いに楽しませています。キリオスにはそういう遊びのプレイも好調のバロメーターですしよい兆候です。
このキリオスにガスケに対応されたテニスで苦しみ、かつテーピングで巻かれた足の具合が懸念されますが、踏ん張ってよい試合ができるか。
フィジカルコンディションとここまでの勝ち上がりを見るとキリオスが有利に試合を進めると予想しますが、注目の戦いです。