錦織選手 右手首怪我影響で2017年全休確定 2018復帰時期における今後の展望
8月16(水)日本時間の19時頃に、錦織選手が右手首の怪我の影響で今シーズンを休養に充てるとの報道がされました。その後、エージェント会社からも正式に全休の発表がありました。
プロテクトランキングに関して気になる人もいると思うので後述します。
復帰時の錦織選手のポイント
気になってくるのは錦織選手がどのタイミングで復帰するかです。それにより、シード状況や復活の足掛かりの位置が変わってきてしまいます。怪我の状態がまだ不明であり、年初~クレーシーズン開始までずれ込む可能性も想定されます。
2018年初復帰
ATPポイント 1885
ランク 20~24位
現在あるATPポイントがそのまま持ち越される形です。マスターズなどでの1回戦免除の可能性がほぼなくなり、1回戦から出場する大会が増え試合数が増加してしまいます。
またグランドスラムでも3回戦からトップ選手と対戦の可能性が高まります。
2018年2月復帰
ATPポイント 1555
ランク 24~28位
ブリスベン、全豪の計330ポイントが失効します。
復帰状況的には年初復帰とさほど変わりません。怪我の具合が思わしくなければ全豪までスキップするのも賢明とは思います。
2018年4月復帰
ATPポイント 1045
ランク 40~49位
アルゼンチン(150)、インディアンウェールズ(180)、マイアミ(180)の計510ポイントが失効します。
ここまで長引くとグランドスラムでのシードも絶望的でかつ、マスターズでも初戦からトップ選手との対戦を余儀なくされ、ポイントが稼げない悪循環にハマってしまう可能性も高くなってしまいます。なんとかここまで怪我の復帰が長引かない事を祈るばかりです。
プロテクトランキング
半年以上の怪我になった場合はこのPRと呼ばれるプロテクトランキングが復帰後9か月8試合有効になります。
この制度は、怪我発生からの3ヶ月の平均の順位をランキングとして使用できる制度です。
錦織選手は怪我が8月中旬ですので、ツアーファイナルまでのランキングの平均となります。全米で720と早い段階で大きな失効はありますが、3ヶ月合計では15位当りになるのではないかと予想されます。
9月 2475 14~17位
10月 2475 14~18位
11月 2085 18~21位
錦織選手は2016年の9月~10月中旬にかけてもツアーを欠場していたため、その間の失効はありません。従って上記のようなポイント曲線をたどります。
概算して15位~17位と、マスターズでのシード権が得られる範囲の順位に収まりそうです。
1年近くの長期離脱にでもならない限りは使わない
ここまで説明しておきながら、最も疑問に思っている「ではプロテクトランキングを使ったらシードは?」に関してです。
今年は錦織選手だけではなく、ジョコビッチ、ワウリンカ選手なども長期離脱をしております。
彼ら3人が例えば1年怪我の影響が長引きポイントが0になったとします。
プロテクトランキングをもし3人が使用する事になり、シードが付与されるとした場合、シード権がかなりぐちゃぐちゃな事になります。他の選手で16位にいるのにマスターズの大会でシードがもらえない!という事も出てきそうに思いますが、、、。
プロテクトランキングはあくまで、大会エントリーを可能とする制度です。ポイントで大会に予備予選から参加せざるを得なくなった実力選手の公傷制度です。この制度にはシードまでは保証しない模様です。本選からの出場が認められるのみです。
プロテクトランキングを利用して8試合のうちにグレードの高い大会で結果を残さないといけないという事になります。
以上の事から9か月で8試合という規定が与えられます。試合を選ぶ必要が出てくるのです。
尚、この制度にはワイルドカードは反映されません。大会によっては過去のトップ選手を呼ぶために客寄せのために使いたいWCですから、1年近くでポイントを亡くしたトップ選手はこのプロテクトランキングとワイルドカードを利用すれば、早期にランキングをある程度まで戻す事が可能なシステムという事が言えます。
シード権が与えられない事からドロー運によってはなかなか這い上がれない事もあるでしょうが、予備予選からの参加が免れるのは大きいでしょう。
欠場判断理由
欠場判断の理由に関しては、右手首の怪我の具合により全米オープンが出場不可能になったため、今後のツアーの出場も見送るという格好となりました。
トップ選手にとってはグランドスラムに出るか出れないは大きな境界線で、そこで活躍ができないのであれば後のシーズンは試合に出る意味もそれほどないと考える傾向にあります。
また、今後少なくても3週間は固定が必須で、報道では6週間は練習再開もままならないとの事です。これ程の怪我であれば今シーズン休養に充てるのは正しい判断です。
怪我はただ直すだけでは上位復活は厳しい
錦織選手の長期離脱は4年ぶりですが、まだ成長の余地があった4年前と比べて今度の怪我で再び上位に戻るには怪我を直すだけでは足りないと感じます。
その理由や考察を以下に記載していきます。
再発リスクを大いに残す不安
今回の怪我は今年3月のマイアミマスターズ中に負傷した右手首の痛みの再発かどうかはまだわかっていないとの事ですが、練習したと思ったら再発しバルセロナを棄権しています。
半年たってまたも右手首に、しかもマイアミの時以上の症状と見ます。当時は患部固定期間は1,2週間だったと記憶しています。
手術はしないと発表しましたが、まだ腫れがある状態で事後処置によっては手術に踏み切る可能性もあります。手首はテニス選手にとっては生命線なため慎重な判断が必要となってきます。
また、何度も治ったと思ったら負傷の繰り返しをしているため、錦織選手に対して右手首の不安というのは今まで以上に高まってしまったというのも大きく影を落とします。
錦織の生命線のバックハンド(フォーム改造)
錦織選手はフォアショットよりもバックハンドに切れ味がある選手となっていますが、そのバックハンドのストレートには右手首の捻りは欠かせません。
しかし、気になっていた部分としては手首にかなり重圧のかかる打ち方をしていたというのが影響したという線です。錦織選手は強靭なフィジカルを持っていないため、体の踏ん張りを手首の動きでカバーしている部分があり、手首の酷使によって右手首は限界を迎えていた・・と考えられなくもないです。更には性格的にはムキになる性格ですので焦れば焦る程手打ち気味になってしまっています。
この点に関しては、フェデラー選手を見ればわかる通り、反動を利用して強烈な美しいバックハンドショットを打てるようにフォーム改造を迫られていると感じます。フェデラーは筋肉もかなり増強しており、36歳にしてショットは強烈です。
推測する怪我の全治
今回はそのマイアミの怪我発生時より重い症状であるのは確実で、患部固定期間は6週間。リハビリに3ヶ月はかかると言われています。そこから試合ができるコンディションに仕上げるためには半年は見るのが自然です。
つまりは、全豪オープンに間に合うかも微妙、もしくは厳しいとの判断ができると思います。
長期休養で成功したフェデラーに習う
長期休養して復活したフェデラーとナダルのようにジョコビッチ、ワウリンカ、錦織にも同じような復活を安易に期待する声は危険です。彼らは努力したからこそ復活したのです。そして、努力だけではなく、その気持ちを持ち続けるモチベーションが必要不可欠です。
フィジカル徹底管理
フェデラーは怪我の後は試合ができるように筋力を鍛え上げました。そしてより速い攻撃に磨きをかけ、時間をかけないテニスを洗練させました。全豪オープンでは錦織戦、ワウリンカ戦、ナダル戦とフルセットマッチになっても極端にパフォーマンスが落ちない程にフィジカルを回復させて優勝しました。復帰初戦でここまでフィジカルを整えるのは周りが言う程簡単ではなかったはずです。彼はマイアミ後もクレーを全休したましたが戻って来たグラスコートでは更に筋肉を肥大化させてました。
筋肉肥大は日本人アスリートは結構嫌うのですがスタミナをつけるという意味でフェデラーはやっていたとの事です。動きが重くなるのであれば早い展開にすればよいので気にならないという感じです。そうして徐々に試合を重ねて絞れた筋肉になり、動きも維持できるとの事です。このスタイルなので連戦には不向きともわかっているようです。
モチベーション、自信の復活
錦織選手の最近の試合では勝ちに近づくと焦りや逆に慎重になりすぎるなどの極端な傾向が見え、それが逆転負けに繋がるという展開を見せてきています。試合に対する自信が失われ、かつこのタイミングでの長期離脱です。モチベーションを高めるのはかなり大変です。
かつフェデラーのように他の選手の試合を見る癖は錦織選手にはありません。前回対戦した試合の事も頭からなくなっている部分すらある選手です。それが今までは良い意味で発揮されていましたが、このように自信がなくなってくると迷いに繋がってしまいます。
復活は錦織選手次第
怪我によって多くの時間ができます。この時間を使って復活を期すのも彼次第という事になってしまいます。フェデラーのように他の選手の試合を楽しみながら、自分ももっとやるんだという気持ちになれるかどうかにかかるでしょう。
体が動く時にとる行動はもちろん、体が動かないこの数週間中にどんな事をプランニングするかも復活の上ではカギとなるでしょう。
日本人選手の期待は杉田に注がれる
テニスファンの中ではほとんどが錦織選手のファンであると考えられるため、これで日本テニス界の熱気がひと段落するとは思います。
そうなると、今後の全米オープン、あるいはツアーファイナルに関しても今後日本で報道を見かける機会はかなり減ると思われますし、テレビ関係者もかなり危機感を持っているでしょう。
ただ、この絶望的な状況で今年は杉田選手という希望があります。
杉田選手はアンタルヤで日本人3人目となるATPツアー優勝を果たしました。また、グラスコートでの優勝は日本人初の快挙です。
更にはその後の大会でもしっかりと勝ち上がりを見せておりますし、トップ20圏内の選手とも今年は多く対戦し勝利もしております。
現在はシンシナティーマスターズにも出場しており、3回戦まで勝ち上がっています。昨年も3回戦まで勝ち進んでおり、ここで若手気鋭のハチャノフに勝利すれば更なるポイント上乗せが期待できます。
シンシナティーマスターズは波乱の連続
シンシナティーマスターズはトップ選手の欠場が相次ぎ、更には残ったトップ選手も続々と早期敗退しています。あれだけ勢いのあったアレクサンダー・ズべレフ選手ですら同世代のティアフォー選手にフルセットの末敗れています。
杉田選手の3回戦のハチャノフ選手もランキングやサーブ性能で言えば格上の選手ですが、冷静でかつ攻めのテニスを見せて打ち勝って欲しい所です。
ここで3回戦を突破すると、デルポトロ対ディミトロフの勝者との対戦が待っています。このQFはどちらが来ても厳しい対戦相手ですが、そこも破るとSFではシード選手はイズナー選手しか残ってない山となります。それほどシンシナティーはあれています。
今回のマスターズは杉田選手にとっても上位進出のまたとないチャンスには違いないですが、まずは納得のいくテニスで魅了して欲しい所です。