2017 ATP 男子テニス最終ランキング
ATPファイナルツアーはディミトロフの完全優勝で幕を閉じました。当初はフェデラーかナダルがファイナルを制すると思われていただけに、意外な結果と言えるでしょう。
また、これによりATP男子テニスランキングで上位の選手のランキングはほぼ確定しました。
「ほぼ」という理由に関しては年内はまだチャレンジャーの大会が残っており、この結果によってはランキングも変わり、50位以下の選手のランキングはまだまだ変動があります。しかし、上位選手はチャレンジャー大会に出場しないため、ランキングが動く事はありません。
- 最終テニスランキング
- 今シーズンの総括と来年の展望
- 来年の展望
最終テニスランキング
ディミトロフが自己新を大きく更新し、トップ3へ
ファイナルで完全優勝を果たしたディミトロフが1500ポイントの大量ポイントを加えて5000ポイントの大台を突破し3位となりました。決勝で敗れていても3位浮上は確定していました。
ゴファン、ソックが自己新を更新
ツアーファイナルで決勝に進んだゴファン、また2勝を挙げて準決勝に進出したソックはそれぞれ800、400ポイントを加えてワウリンカを抜き、7位、8位と自己新を1つ更新しました。
今シーズンの総括と来年の展望
フェデラー、ナダルの大復活
全豪から2人の決勝が実現
フェデラー、ナダルがシーズン序盤からいきなりの復活を見せます。
シーズン序盤のグランドスラムの全豪でこの両者が決勝まで進みフルセットの死闘を演じます。この2人がグランドスラム決勝を戦うのは久しぶりという事もあり大きく盛り上がり、試合もそれを反映した素晴らしいものとなりました。試合後は互いに選手の必要性をたたえ合いました。
【速報中→結果】2017全豪オープンテニス F 決勝 フェデラー 対 ナダル
フェデラーがマスターズも連覇
その後は、インディアンウエールズ、マイアミの北米シーズンでこの2人はどちらも決勝に進み、そのいずれもフェデラーが勝利しました。フェデラーはこれでメジャータイトル3連勝し、ツアーランキングを独走しはじめます。
2017 ATP1000マスターズ マイアミオープン 準決勝 フェデラー対キリオス戦
赤土の王ナダル復活
クレーシーズンに入るとフェデラーが休養を宣言する中、復活を印象付けてはいるものの準優勝続きでストレスをためていたナダルの力が一気に爆発します。
ナダルはクレーコートシーズンでは結局24勝1敗という部類の強さを発揮する事になります。
しかも、全仏オープンでは1セットも取られる事なく7試合すべてをストレート勝利するという圧倒ぶりでした。しかも勝ち上がる毎に対戦相手の強度が増していくにもかかわらず、その完勝ぶりは更に圧倒的になりました。SFではジョコビッチに完勝して上がって来たティエムを全く寄せ付けず、決勝ではマレーと死闘を演じて勝ち上がって来たワウリンカがボールを咥えて打開策に窮する程の圧倒的な強さを見せつけました。
上海マスターズで4度目の対決が実現
上海マスターズでは今年4度目のフェデラー、ナダルの対決となりました。アジアシーズンに入った頃はナダルの調子が良くフェデラーに勝つのではないかと予想が大方を占めましたが、それでもフェデラーがナダルを寄せ付けずに勝利し、シーズンの対戦は4戦ともフェデラーが勝利して終了となります。
グランドスラムを両選手が分け合う
全仏でナダルが圧倒的勝利を収めると、ウインブルドンは今度はフェデラーの出番といわんばかりの圧勝劇を見せます。全仏のナダルと同じようにフェデラーも7試合で1セットも奪われずの完全勝利を収めました。
全米では共にQFまで勝ち上がるもフェデラーがQFで調子を上げつつあるデルポトロに逆転で敗れました。そしてSFではそのデルポトロをナダルが攻略します。序盤はデルポトロにペースを握られるも粘りのテニスでデルポトロの体力を削っていき勝利し、決勝はシードが次々敗れて伏兵として挙がって来たアンダーソンを一蹴しました。
こうしてグランドスラムはナダルとフェデラーが2つずつ分け合う結果となりました。
トップ選手不在の喪失感
昨シーズンもフェデラー、ナダルが終盤まで持たずに休養するシーズンでしたが、上位勢にはそれほど喪失感はないというイメージでした。
しかし今シーズンは大量に上位選手が離脱し、新時代を迎えた、、というよりは寂しいシーズンの終わりとなったイメージが大きいのではないでしょうか。
ジョコビッチ、マレーはシーズンを通して不安定な出来に終始し、ワウリンカはウインブルドン初栄冠に向けて新コーチを迎え入れたにもかかわらず、いずれも夏までに今シーズン終了となってしまいました。
また、ラオニッチ、錦織のヤングガンズの筆頭2選手がシーズンを通して怪我で離脱を繰り返し、錦織はシンシナティーを前に、ラオニッチは楽天での杉田選手との1STセットでいずれも今シーズンを終了してしまいました。
ズべレフの躍進、表と裏が見え隠れするシーズン
昨年、サンクトペテルブルクでワウリンカを破りツアー優勝を飾った事で一気に注目度が集まっていましたが、今年はその才能が一気に開花しました。
ツアーで5勝を挙げ、かつマスターズでは2勝と、これまでほとんどがビック4が独占していたマスターズ優勝に大きな風穴を開けました。しかも、イタリアではジョコビッチ、モントリオールではフェデラーとビック4を破っての優勝は貫禄も十分です。
Aズべレフ対フェデラー 王者の貫禄継承ズべレフ2連覇 2017ロジャースカップ 決勝
北米シーズン序盤は無敵状態
その中でも北米の序盤は手が付けられない強さを発揮しました。
この時はズべレフのコーチとして元世界一位のフェレーロが就いたばかりでしたが、ワシントンのシティーオープン、カナダのモントリオールマスターズで破竹の10連勝を飾りました。内容も自身のサービスゲームではほぼポイントを許さない圧巻のパフォーマンスを披露し、これが今シーズン最後まで続く可能性を大きく感じました。
尻すぼみの終盤戦
しかし、結果的にはシンシナティーマスターズで同世代のティアフォーに敗れてから風向きが一気に変わります。
全米では2回戦、これまた同世代のチョリッチにうまく往なされた格好で敗れると、アジアツアーでは、中国オープンでキリオスにねじ伏せられ、上海マスターズではデルポトロにフルセットの末敗れました。
更にはパリマスターズでは初戦のハーセ戦で再びメンタルコントロールを崩して敗れてしまいます。
ファイナルでもフェデラーと接戦を演じるも、SF進出がかかったソック戦ではソックの粘りにリターンミスを連発して敗れました。
負け試合は一様に終盤ラケットを破壊する行為を繰り返しそのまま敗れています。ラケットを折る事はそこまで否定しないものの、切り替えのフラグとして成立していない以上はメンタルの課題と言えるでしょう。
上位陣の仲間入りを果たした選手
ファイナルのファイナリストのディミトロフ、ゴファン、ファイナル出場したカレーニョブスタ、ソックに関しては飛躍の年となりました。
また、デルポトロも来年に向けて復活の機運が高まります。
ディミトロフ 序盤は絶好調、中盤に落ち、マスターズ優勝から風格が
ブリスベンで錦織を破り優勝したのを皮切りに全豪ではSFでナダルのフルセットの死闘を演じて敗れるも、その後2大会に優勝しいきなりの好発進となる。
しかし、北米シーズンから早期敗退を繰り返す。勝ち上がった大会でもマドリードではティエムに手も足も出ず敗れ、全仏では3回戦、成長著しいカレーニョブスタの前にストレートで敗れる。
しかし、グラスコートではまずまずの成績を収め、ウインブルドンでも4回戦まで進出。
すると、北米ハードシーズンのシンシナティーマスターズでは2回戦でデルポトロを退けると、SFでイズナー、Fでキリオスとやや組合せに恵まれながらもマスターズ優勝を果たす。
全米では2回戦でルブレフに逆転で苦杯を舐めるも、アジアシリーズからは中国オープンでSFに進出するなどし、パリマスターズを待たずにファイナル進出が決定する。
迎えたファイナルではナダルの故障など運が見方についたのもあり楽々とラウンドロビンを通過、準決勝ソック、決勝ゴファン共にフルセットになりながらも粘りが見えた勝利でシーズンを締めくくりました。
フルセットになるとメンタルが崩れる帰来があったのが、リターンでスライスを織り交ぜるなど凌ぐテニスもできるようになり、戦術的幅が広がっており、来年上位陣が復活する中どのようなテニスを見せるでしょうか。
ゴファン 不運や怪我から見事に復活し安定したシーズンに
ゴファンはシーズンを通して比較的安定したシーズンを送りました。
全豪ではディミトロフに敗れた物のQFまで進出。ブルガリアでは地元ディミトロフとの決勝を争うなど、何かとディミトロフとの対戦が多かった年でもあり、計5度の対戦が実現しましたが、結果は1勝4敗に終わりました。
特にクレイコートシーズンではモンテカルロでジョコビッチを初めて破りSFに進出。そのSFのナダル戦では1ブレークリードしながらも主審の不可解なオーバールール判定によりフォームを一気に崩して敗れ去ります。
すると、全仏の3回戦のセバジョス戦では防水シートに足を取られるアクシデントでグラスシーズンを棒に振る事になります。
2017 ATP1000 モンテカルロマスターズ ベスト4 ナダル戦結果 世紀の大誤審
復活してからは調子が戻らず北米ハードシーズンは成績を残せませんでした。いつまでも取れない足のテーピングに本人もイライラが募るのか淡泊なプレイを見せる事もありました。
しかし風向きが変わったのはアジアシーズンに入ってからです。深セン、楽天と2週連続優勝を飾り一気にポイントを稼ぐとパリマスターズまで持ち込まれたものの、ファイナル出場を決めます。
ファイナルでは怪我明けのナダルを破り、ティエムとのSFを掛けた一戦に危なげなく勝利すると、フェデラーの勢いに押されずに早い攻めでやり返すなどし逆転勝ちしました。決勝では惜しくも敗れましたが4度もマッチポイントを凌ぐなど粘りも見せて観客を沸かせました。
ゴファン選手にはまだ今シーズンやり残している事があります。デビスカップの決勝です。デビスカップではフランスと優勝をかけての争いとなり、エースのゴファンは獅子奮迅の活躍が必要となるでしょう。
ソック 運気を味方につけ一気にランキングを大更新
春先の出来を見れば今年は活躍できる帰来がありました。
年初のASBクラシックでいきなりの優勝。デルレイビーチではラオニッチの棄権があったにせよ優勝を飾りました。
メキシコでは西岡に敗れるも、インディアンウエールズマスターズでは錦織を破りSFへ、続くマイアミマスターズでもQFのナダル戦まで勝ち進むなど、ポイントを大きく獲得して期待を見せました。
しかしここからは怪我がちになり、大会も勝ち進めなくなります。クレイ、グラスシーズンはほぼ休業状態となります。
北米シーズンのシティーオープンではSFまで進出するも、それ以外は目立った活躍がなく、グランドスラムは年間で3勝とファイナル進出者としてはかなり寂しい数字でした。
最後の2大会である、スイスインドア大会のQFでゴファンに敗れた時にはファイナルの可能性はあれ、ほぼオフシーズンの事を考えてもいい状況となりました。
しかし、パリマスターは御存知の通り全ての選手の結果がハマりにハマり、一気にファイナル進出を決定し、そのファイナルでも難敵ズべレフを精神的に揺さぶり勝利し、SFではディミトロフを追い詰める戦いを披露しました。
来年は序盤のディフェンドがうまくいけば暫くはシード上位で戦えるため、上位定着のチャンスとなるでしょう。ただし、実力的には望外の位置にいるという事は本人も自覚しており、それ程浮かれる性格でもないでしょう。
カレーニョブスタ 地味にしかし確実にポイント積み上げる
カレーニョブスタはシーズンで見れば安定してポイントを稼いでいました。
年初の南米クレイコートシーズンでは3大会連続でSFに進出、インディアンウエールズマスターズでもSF進出、更には欧州クレーコートシーズンでもエストリルで優勝を飾り、全仏では4回戦のラオニッチ戦の死闘を制しQFに進出しました。しかし、QFのナダル戦で脇腹痛を起こし、ゴファン同様にグラスシーズンを棒に振ります。
しかし、復活後は割と早くトップフォームに戻ると、全米オープンでは4回戦まですべて予選勝者との対決と運も味方につけてSFに進出し、ここで一気にファイナル進出が現実味を帯びます。
しかし、その後アジアシーズンから欧州インドアハードシーズンにかけての5大会で全て初戦敗退し、手元にあったファイナルストレート出場の夢は絶たれました。しかし、ナダルの負傷離脱により2試合ファイナルを戦う事ができました。とは言え、そのファイナルでは準備が万全でないのか淡泊な試合を披露してしまいました。
しかし全体的に見れば望外の位置にいます。シーズンを通じて安定してポイントを獲得していた分、来年も今年並みの安定した成績を見せるかどうかにかかります。上位勢と早い段階で当たるため、更に実力が問われる事になります。
デルポトロ 終盤怒涛の追い上げも及ばず
昨シーズンオリンピックでの銀メダルや、全米ベスト8進出で今年は本格的な復活を果たすかに見えましたが、シーズン序盤はうまくいきませんでした。
ブリスベンでSF進出で視界良好に見えたものの、全豪は欠場。その後北米2マスターズではいずれも好調とは言えないジョコビッチの牙城を崩せませんでした。
更にイタリアマスターズでは錦織を破りQFに進むもまたもやジョコビッチに阻まれるなど思うようにポイントを伸ばせません。
格下相手には確実に勝つものの、シードが上がらないだけに、ジョコビッチやマレーと早期に対戦し敗れるという組み合わせの不運、更には手首の状態が常に万全ではなく出場する大会を選ぶためにポイントは伸びていきません。
しかし全米オープンで流れは変わります。4回戦では風邪や発熱の影響でティエムに押し込まれるも、3セット目から脅威の復活で大逆転勝利を収めると、QFのフェデラー戦も逆転によりSF進出。SFではナダルに対応されたテニスで逆転を食らいましたが大きなポイントを得ます。
その後は上海マスターズでSF進出、更にインドアシーズンに入りストックホルムでの優勝、スイスでのフェデラーとの決勝など、テニスのプレイの質も目に見えて上がりパリマスターズ開始時にはファイナル有力候補に挙がるまでにポイントを回復しました。
迎えたパリマスターズは候補者が立て続けに敗れ、あと1勝でファイナル出場が確定する試合。対戦相手のイズナー相手にキープ合戦でのフルセットマッチとなりながらも、最後はインドアハードと相性のよいイズナーのプレイによりシーズンを終えます。
他の選手に比べても負けた選手はトップ選手が多く、怪我や体調不良が更に改善すればトップ10定着は全く問題ないレベルにあります。
錦織ロス
<シーズン成績 30勝13敗>
特に日本人ファンにとっては錦織選手の離脱は大きく関心度もかなり落ちた印象です。上記にもある通り、シーズンを通して怪我に泣かされました。
南米クレーシーズンの調整が失敗
今シーズンは2月は北米ではなく南米クレーコートでの調整で全仏に焦点を当てた日程を組みましたが結実しませんでした。
試合後双方のコメントバトル? ATP500 リオオープン 錦織選手 1回戦敗退 -
クレイコートシーズンでは右手首の不安で実戦が十分ではないものの、全仏ではチョン・ヒョン、ベルダスコに大苦戦しながらも勝ち切りました。しかしマレーとの対決では相手に復活の機運を与えて勿体ない敗戦を喫します。
相性のよい相手に続々と敗戦
序盤のハードコートシーズン、アルゼンチン決勝では5勝無敗のドルゴポロフの前に完敗を喫し、インディアンウエールズマスターのQFでは負けなしだったフォニーニに良い所がなくストレート負けを喫しました。
グラスコートではハレでハチャノフとの対決で右手首を痛めて棄権すると、ウインブルドンではこれまで負けた事のないバウティスタ・アグートのフラットなリターンに苦しめられ、最後は自滅する形で敗戦しました。
また、北米シーズンではモントリオールマスターズ(ロジャーズカップ)で3勝負け無しのモンフィス選手を追い詰めながらも守りのテニスを突かれて大逆転負けを喫しました。
その矢先の手首の怪我の悪化でシーズンが終了しました。
怪我でシーズンが終了しただけでなく、対戦内容にしてもトップ選手に1人も勝てず、かつこれまで勝てた相手にも負けてのシーズン終了は本人にとっても悔いの残るシーズンとなったでしょう。
しかしそれでも22位で終了できる当りは、地力は確実にトップ10圏内にいると言えるでしょう。
杉田選手の奮闘
序盤は西岡選手がインパクトを発揮
シーズンを通して錦織選手が不安定だったのに対して、他の日本人選手は健闘したシーズンだったのではないでしょうか。
シーズン序盤は西岡がベルディヒやソックのトップ選手を破り、ナダルやワウリンカに果敢に調整する姿が印象的でした。インディアンウエールズマスターズで対ソック戦で大怪我をしてしまいそのままシーズン終了となったのは残念な限りです。
バルセロナオープンの好成績で注目が集まる
かわってそれほど期待を掛けられていなかった杉田選手がバルセロナオープンでガスケやカレーニョブスタを破る快進撃を見せ、日本人のテニスファンの目に止まるようになります。
グラスコート日本人初栄冠
すると、グラスコートで今年新設されたトルコのアンタルヤオープンでは連日40度を超える猛暑の中、SFでフェレールを、決勝ではマナリノを破り、日本人選手としてグラスコート初のATPツアー勝利を挙げ一躍名前が表に出てきます。
勢い衰えず
その後は、それが一時的な活躍でなかった事を最後まで証明し続ける挑戦が待っていましたが、杉田選手は最後までその勢いを維持しました。
ウインブルドンではグランドスラム初勝利を挙げ、2回戦で4日前に対戦したマナリノにフルセットの末敗れましたが良い印象を植え付けました。
北米シーズンに移ってロジャースカップでは初戦のゴファン戦は敗れたものの、フルセットの死闘を演じます。
更にシンシナティーマスターズでは、ソック、ソウザ、ハチャノフと同格以上の相手を破り優勝したディミトロフに挑戦しました。
全米オープンでは2回戦まで進みメイヤーから1STセットを奪うも強気の攻めで経験の差を裏付けられる逆転負けを喫しました。
アジアシーズンに移ると成都オープンではSFまで進出します。
また、楽天オープンではペール、ラオニッチの連続ウオークオーバーにより今シーズン4度目のマナリノとの対戦となりましたが、トップ30常連となったマナリノの前にうまく試合をコントロールされてしまいます。
終盤は勢いのある相手との対戦が連発
その後はストックホルムではデルポトロ、スイスでは若手気鋭のシャポバロフ、パリでは決勝に進出する事になるクライノビッチに敗れる形となりました。
しかし、今シーズンは多くのトップ選手と対戦した事、またその試合で一方的に敗れたわけではない事は来年に必ず生きていくことでしょう。
来年の展望
上位選手が全員復活は困難
今回離脱した上位勢は、
・ジョコビッチ
・マレー
・ワウリンカ
・錦織
・ラオニッチ
上記5名が挙げられますが、この5人が揃って復活は難しいと判断します。
この中で最も復活が難しいのは意外にもジョコビッチと予想します。ワウリンカは恐らくは普通に復活するでしょう。マレーは1位になった事により徐々に下り坂になると予想できます。
また、ラオニッチ、錦織は怪我の多さからこれ以上の活躍ができるかどうかは本人次第となるでしょう。現状は50%あるかないかという所と見ます。特に錦織選手はフットワークと手首のしなりが生命線ですので完治、あるいは不安のない状況にならない限りは1桁順位に復帰するのはかなり厳しいと見ています。
ズべレフの本格化
今シーズン既に5勝を挙げてインパクトを残しているものの、全米以降は全く存在感がなくなったズべレフ。
来年は上位勢も戻ってくるため、ここからが本当の戦いとなるでしょう。
好調時にはサーブ、ストロークに隙がなく、自身のサービスゲームでポイントを与えない強さを秘める一方、メンタルの波が大きく、立て続けにネットにリターンを掛けるとあからさまにイラつきを見せます。
とりわけこのスタイルはフェデラー相手には一定の成果があるものの、ナダル相手には化けの皮を剥がされている側面があります。ジョコビッチも調子が普通以上であればこのタイプは苦手としないでしょう。
という所で、ビック4との来年の対戦が今から楽しみです。
NEXTGEN選手の活躍
シーズンを通して安定していたハチャノフ、ルブレフ、随所に粘りを見せたチョン・ヒョン、そして夏頃から一気にブレークした感のあるシャポバロフ、これに潜在能力の高さを見せるティアフォーやメドベデフ、やや成長が停滞しているチョリッチやドナルドソン当りは来年も自分自身の実力を証明する必要があるでしょう。
現状ズべレフのように一気にトップ選手に上がれるかは予想が難しいです。
爆発力で言えば筆頭はシャポバロフとなるでしょう。サウスポーから繰り出される思い切りのよいプレイスタイルは観客を魅了するのに十分です。また、まだ本格復帰していないものの、タナシ・コキナキスも注目してよい選手でしょう。
アジアの盟主の入れ替わり
当然本来であれば錦織選手がアジアの選手の中では抜けており、来年も最注目される選手には違いないですが、チョン・ヒョン選手もNEXTGENファイナルでの優勝で1つ箔がつきました。テニスのプレイスタイルはやや地味めなスタイルですが、負けん気が強く、19歳で出場した全米の1回戦ではワウリンカ相手に真向から打ち合い3セット連続のタイブレークの競った勝負を披露しました。全仏の3回戦ではサスペンデットがなければと思わせる程錦織選手も追い詰めました。メンタルの部分はかなり出来上がっています。後はより観客に訴えるようなテニスができれば周りの応援が後押してくれる選手になるのではないでしょうか。態度は至って良いのですが、やはり華に欠けており、シャポバロフとはその部分で対照的です。
それが身に付いた時には錦織と比較されるレベルに達する事になるでしょう。そしてそれはそれ程遠い未来とは思えません。
杉田選手は、冷静に見れば今シーズンのランクを維持するのは厳しいと見ざるを得ません。前述したとおり、序盤のディフェンドのない時期でどれだけ稼げるかにかかります。ディフェンドがない分ATP250レベルではシードが付く大会もあり、そこでしっかりQF以上でポイントを稼ぐ必要があります。
クレイコート、更にはマスターズで今年以上の活躍をしようと思った場合は今年以上に上位勢に勝つ必要が出てきます。ジョコビッチ、マレー、ワウリンカとも何度も対戦する事になるでしょう。今年はシード20位当りの選手にはかなり良い成績を収めましたがトップ10ランクの選手には勝てませんでした。その殻を破れるかどうかが杉田選手がランクを「維持」するための条件となるでしょう。
若手が育ち、トップ選手が復帰する中では+αがあってやっとランキング維持が可能という見立てです。しかし、その事は杉田選手が一番わかっているはずです。
2019年のグランドスラムからはシードが現行の32⇒16に減少する事が既に発表になっており、この流れはマスターズやATP250・500の大会にも余波を残す事になるでしょう。今まで以上にシードの保証が効かなくなると考えるべきでしょう。
その中で上位が高齢化し、いよいよテニス界が変わり始めるという予兆がある中、来年は選手はどんなプレイを見せてくれるのでしょうか。