2018 錦織、杉田の今後のポイント推移
現在ATPツアーレベルで活躍する日本人は杉田選手と錦織選手の2人と言えます。西岡選手は怪我の影響でランキングを大きく落とし残り7回のプロテクトランキングを有効に活用する段階にいますし、ダニエル太郎もまだツアーレベルまではきていません。
杉田選手
杉田選手の今後の失効ポイント
クレーシーズン
ATP500 バルセロナ QF 94
グランドスラム 全仏 2回戦 45
計 139
グラスシーズン
チャレンジャー サービトン 優勝 110
ATP250 アンタルヤ 優勝 250
グランドスラム ウインブルドン 2回戦 45
計 405
後半戦
ATP1000 カナダ 1回戦 10
ATP1000 シンシナティ QF 180
グランドスラム 全米 2回戦 45
ATP250 成都 SF 90
ATP500 ジャパン QF 90
ATP250 ストックホルム QF 45
計 460
芝シーズンをどう乗り切るか
ポイント的にはクレーコートシーズンは大きくランクを落とす事はないでしょう。今シーズンはマドリードやローママスターズにストレートで参加できますし、そこで3回戦当りまで進む大会があればポイントを増やす事も可能です。
問題はグラスコートです。チャレンジャーでの優勝に加えアンタルヤの優勝ポイントが大きく、わずか1か月で400ポイント超を稼がないといけません。トップ10選手レベルの活躍を見せる必要があり、今年もその再現を期待するのは酷でしょう。従ってここでややランキングを落としてしまうのは致し方なく、その分をクレーシーズンで稼いでおきたい所です。
後半のハードコートでは総合で460ポイントは錦織選手を追っているファンからすれば大したポイントではなく見えますが、大会実績を見ればわかる通り、QF以上を4大会達成してやっとこのポイントなのです。維持が目標となるでしょう。
杉田選手の現状
ここまで杉田選手は今シーズン4勝9敗と大きく負け越しております。しかしそれでもランキングはほとんど落ちておらず40位台前半をキープできていますが、これは前述した通り、昨年のシーズン中盤から後半にかけてポイントを獲得した事によりまだ大きな失効が来ていない事につきます。
杉田選手は劣勢に追い込まれても決してあきらめないストロークや強気の攻めが特徴です。サーブも錦織選手より安定感があります。ただしフォアに比べればバックハンドの威力がトップ選手と比べると非力さがあります。
勝負所でミスが目立つ
プレイぶりを見てみると昨年より大きく落ちているという感じはありません。しかし土壇場でポイントを取り切れない場面が目立ち、わずかの差で敗れるという場面が目立ちます。昨日のバルセロナオープンの初戦ロペス戦も追い込まれながらも粘ってタイブレークに持ち込んだりはするものの、逆に2ndセットはサービンフォーザセットを落としタイブレークに敗れるなど、「ここ」という場面での勝負弱さが勝敗に直結しています。
研究される立場による停滞
昨年まで勝てていた展開で粘り切れないのは、それまでの過程でバックハンドをうまく攻めさせられている部分にあります。それはすなわち、対戦相手がツアーレベルになった杉田選手の特徴を研究しているという事です。研究される立場の選手になったとも言えます。
こうなると実力は変わらなくても勝っていたものが負けになってしまいます。ハチャノフ戦などはその典型と言えるでしょう。ハチャノフは膠着状態になると分が悪いのをわかって最後まで押し切りました。声を上げ自分を鼓舞していました。つまりは杉田選手は更なるレベルアップを図った場合でも現状維持という所なのです。プレイの上積みが無ければランキングは徐々に下がっていくのは仕方のない状況と言えます。
プレイ精度は落ちていませんので、「ここ」という時にもっと踏ん張れるようになる、あるいはそうしないように序盤からリードできる程のプレイ精度の上積み要素が必要となるでしょう。杉田選手のストロークの強度を見る限りでは劇的に強度を増す事は難しく、「ここ」という場面でミスの少なく、しかし力強くと高いレベルのプレイができる事が求められます。そしてそれがコンスタントにできるのがトップ50の選手なのです。
錦織選手
錦織選手の今後の失効ポイント
クレーシーズン
ATP1000 マドリード QF 180
ATP1000 イタリア国際 R16 90
ATP250 ジュネーブ SF 90
グランドスラム 全仏 QF 360
計 720
グラスシーズン
グランドスラム ウインブルドン 3回戦 90
後半戦
ATP500 ワシントン SF 180
ATP1000 カナダ 1回戦 10
計 190
怪我しなければトップ10復帰は可能性大、ファイナル可能性も
モンテカルロで大量600ポイントを獲得した事によりハードコートでの失効総合はほぼプラスで終えるでしょう。ただし、更にランキングを考えれば今後のポイントで720の失効を補えるかを見るべきでしょう。このポイントは大きく、どの大会でもQF以上は進む必要があります。現状のランキングですとトップ10を必ず1大会で1人は倒さないと難しく、簡単ではありません。
グラスシーズンではハレでの2回戦の45ポイントがノーカウントなのでウインブルドンのみの表示です。グラスコートは怪我の様子を見て無理する必要はないでしょう。
そして北米から始まるハードコートでは失効はないも同然ですので、マスターズ4大会にグランドスラム、日本のジャパンオープンなどでどれ程活躍できるかにかかります。
ランキングに関しては現状の22位をシーズン終了に下回ってる事は考えにくいでしょう。
錦織選手の現状
復帰からクレイシーズンに入るまでは感染症もあり、芳しくない復帰過程と見られていましたが、モンテカルロでの1週を通してのハイパフォーマンスとスタミナ維持、更にはプレイ強度の高さを見てプレイレベルではほぼ復活していると見ていい状況です。
ランキングがまだ22位だから復帰間近(まだ完全復調とはいかない)との報道が多いですが、プレイレベルは復帰しています。課題はパワフルショットを持つ相手の対応というのは昔も変わっていません。
ショットの精度を見ますとバックハンドでの対応はほぼ戻っているように感じます。ただし力を入れる時のフォアショットの精度がまだムラがあるように見受けられます。このフォアショットに関しては、序盤戦ではミスが連発する不安定さがありましたが、準決勝や決勝ではそれが連続する事は少なく、試合毎に徐々に修正はされていっているように感じました。
勝負所で際立つ集中力がシーズン通して持つか
これは杉田選手と対照的なのですが、錦織選手の勝負所での強さは際立っています。臆病なショットを打つわけでなく、攻めていてしかいラインに吸い込まれるような美しいショット、スマッシュに背面ボレーで対応したり、又抜きショットを見せたりと多彩です。
ただしこれがシーズンを通してできるかはまだ課題があります。モンテカルロではほぼ良かったものの、昨シーズンのように悪い面を見せる時もあるでしょう。その部分でモンテカルロレベルでの集中力を多くの大会で持てればプレイ強度に関しては錦織選手にとやかく言う事はないのではないでしょうか。
若手選手との対戦
モンテカルロではワシントンで完敗したズべレフをフルセットの末破りました。しかしこの世代はズべレフだけではなく、2回戦で対戦したメドベデフ、更にはルブレフ、ハチャノフ、チョンヒョン、チョリッチ、メキシコで敗れたシャポバロフなど、多種多彩の有望選手がひしめいています。
彼らは試合をやる毎に強くなっていっています。やや落ち着いてしまったズべレフも再び成長軌道に乗る可能性はあり、特に錦織と相性が良くないテニスをするチョンヒョンには要注意でしょう。
怪我との戦い
怪我なければ北米シーズンに入る前にはトップ15には入っているのは確実です。しかしそうするためにはタフながらも怪我の事も考慮して立ち回る必要があります。
モンテカルロは疲労による手首痛との事ですが、疲労も蓄積すると腱に影響が出てしまいます。プレイ強度を増す回数は限定的に、大会の序盤では7割程度の実力でも勝てるようなテニスも必要となってくるでしょう。ただし、サーブで主導権を握りにくい錦織にとってはその部分で他のトップ選手より疲労がたまりやすく、それが怪我の原因となるのは今後も避けられず、結局の所は「怪我とうまく突き合う」必要が出てきます。
何れにしてもモンテカルロでの気運を逃さず、クレーコートシーズンでは粘りのあるテニスでどこまでできるのかに期待したい所です。