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2018 ジョコビッチ敗退 復活には更なる改革が必要

 5月8日(火)に行われた錦織対ジョコビッチ戦で周囲の目からも復活の機運を向けられ、本人も「このレベルでプレイできたことに満足している」と言及していたジョコビッチですが、2回戦では若手のエドマンドに粘りながらも敗退しました。

 

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 ジョコビッチが不調になってから既に2年程時が立ちますが、その間全盛期を思わせるような安定した動きの試合を見せたのは数える程しかありません、そしてそれは、先日行われた錦織戦でもありません。あの試合でもジョコビッチは安定性があると言えるテニスをしてはいませんでした。

速いテニスが通じず、試行錯誤の末・・ エドマンド戦

 元々のジョコビッチがミスが少ない選手ではありませんが、ポイントをわきまえた集中力で他の選手を圧倒していました。そういう意味で言えば錦織選手はその部分を少しは見せていたとも言えます。

 しかし、今回対戦のエドマンド選手に対しては錦織戦で披露した早い攻めが全く通じませんでした。むしろエドマンドのサーブに常に防戦の形で決めるべきショットまで持って行けずにウイナーを食らう場面が目立ちました。

 

 2ndセットややテニスの内容を変えて受けて凌ぐテニスにしてエドマンド選手のミスを誘う戦術が奏功してこのセットを取ります。

 

 ファイナルセットになるとエドマンドもやや冷静になり、ただ振るだけではなくしっかりジョコビッチの動きを見て対応していきました。

 とは言え、守りに入ったら隙の少ないジョコビッチは自身のサービスゲームを危なげなくキープし、更にはエドマンドのサービスゲームで0-40と3つのブレークポイントの好機をつかみます。しかしここをエドマンドに凌がれてしまうと、その後のサービスゲームでエドマンドにこのゲーム最初のブレークポイントを握られると、エドマンドの気迫に押されてリターンをミスショットしあっけなくブレークを取られてしまいます。

 迎えたエドマンドのサービンフォーザマッチでは、ジョコビッチにはもはや力は残っておらず、あっさり3つのマッチポイントを握られ、反撃の気配もなくそのままセットを取られて敗れてしまいました。

 

守備的に行くと攻撃できない

 錦織戦では常に攻撃的姿勢でショートポイントを狙ったショットが多かったジョコビッチは、エドマンド戦では逆に威力で押され、自身のショットも安定しなかったため、じっくりと撃ち合う形で2ndセット以降は立て直しましたが、相手にもそこを対応された場合、自分から行く事ができませんでした。

 エドマンドは執拗にジョコビッチのアドサイド(バックハンド側)を狙いますが、このショットに対してジョコビッチはほぼ強いショットを打つ事はできず、ただリターンするのみでした。これは、ジョコビッチが強打を打てないのか、勇気がないのか、それともミスを待っているのか定かではありませんでしたが、少なくても良い時のジョコビッチであれば変化を付けたり、相手の思い通りにさせる事はなかったでしょう。相手の思うように動かされたように見えます。

 ファイナルセットもペースは悪くありませんでしたがジョコビッチが3つのブレークポイントのチャンスを逃すと一気に行かれた印象です。この一気にいかれる部分がとてもジョコビッチらしくない所のように思えます。

 

現状12位のジョコビッチのランクは実力を表す

 今年のジョコビッチの敗戦を見ますと、全豪のチョンヒョン戦では、自分自身をコピーされたような攻守一体のプレイに根負けし、インディアンウエールズではダニエル太郎相手にファイナルセットは攻め続けられてエラーを量産し自滅、マイアミではブノワ・ペールに成す術なく無気力と言える内容で敗れ、モンテカルロのティエム戦では意地は見せたものの最終的に実力で押し切られ、バルセロナでのクリザン戦では粘りつつも最後は責め立てられ、今回のエドマンド戦も受けに回った後の攻め手に欠け、最後は根気が尽きました。

 負ける内容も様々ですが、一様に相手に攻めたてられて負けてるというのが言えるでしょう。特にダニエル太郎との試合は衝撃的に一気にエラーを量産し、最後は体も動かなくなっていました。

 一言で言えば今のジョコビッチは昔の自分と戦いすぎているという感じです。昔が忘れられず、どうやって取り戻すかを試行錯誤している感じです。

 

フィジカル面がジョコビッチを退化させた

 昔はできたのには今はできない・・、その葛藤と戦っているからこそプレイが安定しないのでしょう。メンタルも非常に不安定ですし、1ゲームや1ポイントでプレイ内容が変わる事もよく見られます。

 メンタルが追い込まれる時は決まって相手に攻められた時です。逆に言うならばまだ自分自身に苦手意識を持つ選手には比較的悪くないテニスができており、錦織選手との試合などはその典型です。

 報道で言われるよに錦織戦だけよかったというのは完全に間違いで、錦織戦ですらあまり変わらなかったというのが見立てとして自然です。むしろダニエル太郎のようにファイナルセットは、自滅していくジョコビッチを見て、普段は受けのテニスをする彼がどんどんリターンを叩いていました。そしてそういう相手にジョコビッチは今なすすべがないのです。それが現実です。エドマンド戦である程度対応できたのは、錦織選手ができるというパワーを与えた部分があるでしょうが、今回の負けでその気持ちもまたリセットされてしまうでしょう。

 

 守備的に行っても守り切れない、相手が叩くショットに対応できない、それは一重にジョコビッチが相手のショットを受けて構える時に、反応する速度が一瞬遅れる事に起因します。自分が予想していない方向にボールが来ると大声を張り上げての対応が目立ちます。と、いうよりも、広範囲でカバーするのであれば逆貼りにも対応できるように体が準備していなければいけませんが、それが出来ないのが今のジョコビッチです。よって馬鹿打ちする選手には体が追い付かず、そのうちにメンタルもやられてしまい負けてしまいます。

 それがわかっているからなのか、最近のジョコビッチは攻めが早いです。しかしながらその早い攻めは、ただの速い攻めで威力はなく、また相手の意表を突いてもいないので躱されると脆い部分が見えます。

 これらすべてフィジカルが足りてない事に起因します。体の初動を潤滑にする筋力、相手の反撃を与えないリターンをする筋力、この両面でジョコビッチは全盛期には程遠く及びません。

 

 そして、フィジカルが足りてない部分から考えると、試合を増やせばその感覚が戻るという事はないように感じます。実際復帰してから既にそれなりの試合数をこなしていますが、復調の兆しはハッキリと見えてきません。

 

ただフィジカルを鍛えるだけでは難しい

 とは言え、ただ筋肉をつけるだけでは復活は難しいでしょう。ジョコビッチは30を過ぎ、普通にしていても運動能力が落ちてくる年齢となりました。今までできた一部の事を捨ててある部分を磨くというような、より頭を使ったフィジカルの鍛え方が必要となるでしょう。

 フェデラーが復帰後物凄い筋肉をつけていましたが、彼に関しては元々が早いテニスなため、長いラリーをするためではなく、2週間持つフィジカルを付けるためあのような肉体改造になったと想像できます。

 ジョコビッチもこのように、自分のスタイルに合うフィジカルを作り上げる必要が出てきます。見るからに全盛期よりも線が細い体では1,2試合自分の思うような試合ができても、それが続かないのは当然ではないでしょうか。

 

周りでなく自分を見ない限り復活は・・・

 今はコーチを変えたり、身の回りを変える事で自分自身以外の事が原因だと本人は思っているのかもしれませんが、自分自身の原因を見つめなおさない限りは復活はまずないと言い切れるでしょう。その部分を復帰したヴァイダコーチはどう捉えているかもポイントになるでしょう。

 救いなのは、ジョコビッチ自身がテニスに諦める事なく、勝つためにもがいている事です。それは試合中に雄たけびを上げたりする事でもわかります。この試行錯誤が続くうちはまだ復活の可能性はあるでしょう。諦めた瞬間、その可能性は0とります。

 

ナダル「ジョコビッチの復活は全く疑ってない」とは

 他の選手は現状のジョコビッチを見ても復活を疑わないという発言は目立ちます。しかしそれを額面上に捉える事は意味がありません。ナダルもフェデラーもデルポトロ、錦織でさえも復活に懐疑的な目を向けられましたが彼らは自分にあった手法で復活を遂げたり、復活の足掛かりをつかみました。

 ナダルは諦めない精神の元に筋力トレーニングを怠らず、フェデラーは試合数を制限し出る大会に十分なパフォーマンスをするために速筋を鍛え、デルポトロも怪我と付き合うために大会を制限し、試合ペースを安定させるためスライスを磨き、錦織は試合ペースが長引きフィジカルに問題がきたすのを防ぐために1stサーブの改善に取り組んでいます。彼らには彼らなりのやり方で怪我や不調と向き合ってきています。ジョコビッチもその途中という事です。

 ジョコビッチの攻守一体のスタイルはよく言えば万能ですが、逆に言うとこれという持ち味がないとも言えます。このスタイルでどのように自分自身を改善していくかは非常に興味深い所です。

 現状はフィジカルが足りていないのは本人も理解しているらしく、フェデラーのような早い攻めで凌ごうという意図が見れます。しかし、フェデラーはそれをするための筋力を鍛えたのに対してジョコビッチはそれが出来ているとは思えません。そのような部分で改善方法に正しく取り組む必要は出てきています。

 そしてその方法を探るのも実行するのも本人次第という事になります。

 

 何れにしても、復活して昔のようなプレイヤーになるには猶予はそれ程多くはありません。

 

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