週末はスポーツ観戦

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2018 ATP1000 QF準々決勝 ナダルの連続セット奪取及び連勝をティエムが止める マドリードオープン

 これまで部類の強さを誇っていたナダル。これまでに昨年のローママスターズで敗退してから、

 全仏完全優勝

 デビスカップドイツ戦の2戦

 モンテカルロ5戦

 バルセロナ5戦

 マドリードでの2戦

計21戦、

 3セットマッチ9試合(全仏QFカレーニョブスタ戦は2stTKOにより2セット換算)

 2セットマッチ12試合

いずれもストレート勝ちで50セット連続奪取は全サーフィスでカーペット時代をさかのぼっても最多を更新しました。

 

今市安定感がなかったはずのティエム

 昨年のティエム戦からの連勝で、その再戦として注目はされたものの、リベンジマッチである全仏の準決勝では完膚無きまでに叩きのめし、かつティエムが昨年に比べて体を引き絞った効果が出ておらず、どの大会でもやや不安定な出来を見せていただけに、この試合でナダルを破るのは難しいと思われたのが下馬評だったはずです。

 

序盤からギアを上げるナダルは、しかし

 序盤のナダルは様子見というか、どことなく浮ついたショットも披露するのがいつものナダルです。この日は第1ゲームから互いの攻防が白熱するなど、いつになく序盤のペースが速いという印象を受けました。

 このままキープが続くもののそこからナダルのペースが上がると思いきや、ミスも多く、いかにもナダルらしい1st目という出来に落ち着いていきます。

 しかしティエムのショットはこの日は鋭く、ナダルの逆を突き反応できないようなウイナーを立て続けに披露します。

 このようなプレイに更なるプレイで畳みかけるはずのナダルは、しかしペースが一向に上がってこず、ティエムのフォアクロスが決まりティエムが先行ブレークを奪う展開となります。

 リターンゲームでブレークポイントを奪うも、ティエムの攻めにナダルはチャンスをいかせず、ついにティエムのサービンフォーザセットとなります。ここでティエムは気負いからからダブルフォルトなどで態勢を崩すと、フォアのショットがサイドアウトとなり、ナダルは渾身のガッツポーズとともに、連続奪取セットの記録が途切れるのを阻みます。

 所が第11ゲーム、ナダルのサービスで、ナダルのリターンがネットにかかるなどし、2つのブレークポイントを握られると、最後もバックハンドのリターン精度が狂い、再びティエムにサービンフォーザセットが来ます。

 今日のティエムは2度目のチャンスは逃しません。セットポイントを握ると、最後はワイドへのサービスエースであっさりと締めくくり、これによりナダルの連続セット奪取記録は50でストップする事になります。

 

2ndセットもペースが上がらないナダル

 普段なら2ndセットはペースが一気に上がるナダルだが、セットを取られた後はどうか?が注目されるこのセット。

 やはりというか、いつもの2ndセットとは違い、信じられないミスを連発するナダルは、このセットも先行ブレークを奪われます。

 しかし、ティエムの攻めはミスと表裏一体であり、更には2連続のダブルフォルトなどでナダルがブレークバックし、ナダルも飛び跳ねてガッツポーズを見せるなど、現状の苦しさを隠そうとはしません。

 とは言え、ティエムはこれで怯みません。セットの後半からナダルの体が反応できない鋭いリターンを連発します。これにはナダルもどうしようもないという表情を見せます。そして、ネットに出てのスマッシュ連発や、振られてからのストレートのダウンザラインショットなどでティエムが再び先行ブレークを果たします。

 迎えた第9ゲームナダルのサービス、ゲームカウント3-5のこのゲームでもティエムの攻めが光りナダルは2度のマッチポイントを握られます。すると最後は回り込んでのフォアクロスがナダルの逆を付き、この瞬間ティエムを両手を突き上げます。

 ナダルは連続セット奪取の記録が途切れただけでなく、昨年のローランギャロスから続いたクレー連勝記録も21連勝でストップしました。

 

ナダルの動きの鈍さとティエムの完璧なゲームメークの調和

 ナダルと言えば無尽蔵のスタミナとどこまでも追いかけ、追いつける守備力を元に、大外から巻きこむスピンリターンや、バックハンドから放たれる強烈に落ちるスピンリターン(モンテカルロの錦織戦で見せた急激にライン際で落ちるリターン)などを駆使し、相手にそれはないよと思わせるようなプレイで心を折り、優位に試合を進めていく特徴がありました。

 しかし、この試合ではティエムは失敗しても全くひるまずに強打を連発しました。

 また、ただ強打を打つだけでなく、ナダルを誘導してのパッシングなどでナダルが反応できないようなショットも繰り出すなどし、エラーよりウイナーが多いという完璧な試合をこなしました。クレーコートは球足が遅く、リターンに追いつけるため、ウイナーよりアンフォーストエラーが多くなるのは普通のサーフィスですが、ナダルみたいに守備力の高い相手にエラーよりウイナーが多いというのは特記すべき事由だと思います。

 またナダルの方も自分が優位に立てない事に苛立ち、ボールガールに当たる事や独り言を再三呟くなど、メンタル面でもティエムに相当に追い込まれており、そのせいか体の反応もいつもよりも鋭さがないのか、ナダルらしい守備力が発揮されなにく試合となりました。

 そしてそれは、9本以上のラリーではティエムが7本もナダルを上回るなど圧倒した事からもうかがえます。長いラリーはナダルの真骨頂なはずがそこでポイントを取れない事にはナダル自身もメンタルに来てもおかしくはありません。

 

 このようにナダルが良くなかったにしても、酷い出来だったとは言い難く、ティエムが素晴らしいテニスをした事により、ナダルの記録を止め、またマドリードオープンでの本命に躍り出た事になります。

 

今後もクレーはこの2人が主役

 負けたナダルですが、昨年のローマでの敗戦後はしっかり切り替えて対応しました。と、言うよりも試合に負けた後足早に会場を後にしており、早く切り替えようと努力をした結果でもあります。

 今回はどうでしょうか?

 今回に限れば敗戦後そそくさと会場を後にする事はなく、じっくりゆっくり噛み締めて観客に手を振りコートを去りました。地元開催でこのような対応をしたというのもあります。しかし、この様子の一部始終を見る限りは、昨年の敗戦のソレよりもダメージは大きいように感じます。昨年大丈夫だったからと言って、今年もここから圧倒的な強さを再び見せるかどうかは一抹の不安を覚えます。やはりナダルと当たるならばSF以前に当たると勝ちやすいというのは少なくても言えるとは思います。もちろんティエムの素晴らしい出来が無ければ無理ではありましたが。

 

 ティエムの方は今シーズンのクレーでの曖昧なプレイにナダルの勝利で終止符を打つことを周りに大きくアピールする事に成功しました。

 今後ティエムがナダルに対しての本当の意味での対抗馬になるのは今後のマドリードの2試合にかかってきます。SFのアンダーソンに対してはクレーコートであれば圧勝してしかるべきです。決勝では恐らくズべレフが上がってきます。フェレーロコーチを解任してから心配されたズべレフですが、やや落ち着きを取り戻し、再び成長曲線に入ってきた印象もあり、この対戦はかなりの注目となるでしょう。もっともズべレフでなくても同胞の先輩ラオニッチを破り意気上がる19歳シャポバロフが来る可能性もあります。

 

 何れにしてもナダルが敗退し、若い芽がこれからのテニスをどう作っていくかに注目したい所です。

 

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