2018 ATP1000 F決勝 ナダル 対 Aズべレフ イタリア国際
5月20日(日)日本時間の23時からイタリア国際オープンの決勝が開始されます。
決勝のカードは、クレイキングナダル、これに対するのは3週連続優勝を狙う若き王子様アレクサンダー・ズべレフ。
過去の成績はナダルの4勝0敗。直近ではデビス杯のドイツ対スペインで、復帰試合となったナダルがストレートの完勝を収めました。
ここまでの勝ち上がりは、ナダルがフォニーニの反撃にあいはしたものの、SFのジョコビッチ戦で互いに良いプレイの中でも粘りを見せて貫禄勝ちをするなど、マドリードでの負けを払拭する出来です。
対するズべレフは3週連続の13連勝と勢いと確かなプレイ精度を見せます。SFのチリッチ戦は激戦となり、1stセットはタイブレーク、2ndセットは先にブレークを奪われながらも深く厳しいショットでチリッチを追い詰めての逆転で下しました。
互いにレベルの高いSFを戦っており、決勝戦の疲労具合も気になる所です。
1stセット
第1ゲーム、ナダルのサービス。開始からズべレフの緩急をつけたプレイが目を引く。ドロップショットでナダルを崩し、更にはフォアの強打でナダルを攻めいきなりの3つのブレークポイントを掴む。ここをボレーなので2つは凌ぐものの、深いショットのラリーでナダルのフォアショットがアウトし、ズべレフが先行ブレークを掴む。
第2ゲーム、いきなりブレークを奪ったズべレフは、しかしナダルの深いリターンに苦しみこちらもいきなり3つのブレークポイントを握られる。ここでズべレフのドロップショットにナダルもそれ以上のドロップで応酬し、ナダルがブレークバックに成功する。
第3ゲーム、互いに序盤からギア全快で挑む白熱する。このゲームはナダルのサーブがさえ、ラブゲームキープする。
第4ゲーム、ナダルが前に出てプレッシャーを掛けると、ズべレフがダブルフォルトを犯し、ナダルが2つのブレークポイントを掴む。ナダルは深い位置に構えてズべレフの強打をことごとく拾うと、上下の動きで狙いすましたフォア逆クロスが華麗に決まり、ナダルがブレーク先行する。
第5ゲーム、決勝のナダルの集中力は際立つ。ズべレフも良いプレイを見せるも上下の動きでズべレフのバックアウトを誘い、ナダルがキープする。
第6ゲーム、ズべレフが簡単に40-0とするも、ナダルの深いショットや、ドロップに対する反応、更にはフォアのダウンザラインショットなどでデュースに持っていかれる。更にはズべレフがリターンを力み、このゲームもブレークポイントを握られると、コードボールをナダルが強烈なスマッシュで沈め、これでナダルは5ゲーム連取となる2ブレークを果たす。
第7ゲーム、ナダルのサービンフォーザセット。ナダルはサーブもよく、深いコースのサーブで崩し2つのセットポイントを掴むと、ワイドに振り、ネットに出てのボレーショットでナダルがこのゲーム6-1と6ゲーム連取で取ります。
ズべレフのサーブの威力は悪くありませんが、相手は決勝仕様のナダル。プレイの精度や勝負所での決めきる力でズべレフを圧倒していきます。
とはいえ、ズべレフはストロークでも戦えており、何かのきっかけさえあればいい勝負になる可能性はあります。どこまで追いすがれるでしょうか。
2ndセット
第1ゲーム、ズべレフのサービス。ナダルのプレイ精度は衰えず30-30となる。ここから深く下がったナダルに対するドロップショットを決めるズべレフがキープする。
第2ゲーム、雲行きが怪しい会場の上空。ズべレフの深いショットにナダルがリターンに迷いズべレフが2つのブレークポイントを掴む。ナダルの浮いたボールにズべレフがライン際に鋭いフォアリターン、これをナダルがネットにかけ、ズべレフがこのセットも先行ブレークを握る。
第3ゲーム、1stセットは先行ブレークを生かせなかったズべレフは、強烈なリターンでナダルを攻めるとナダルのリターン精度が少しずつ狂い、ズべレフがラブゲームキープで凌ぎ、1stセットとは違う流れに持ってくる。
第4ゲーム、シード1、2位の決勝という事もあり、立ち見も出る満員の会場に厚い雲に覆われる空。ズべレフのギアがさらにあがりズバックハンドストレートにナダルが反応できないシーンが出てくる。更にはナダルのバックハンドクロスがアウトになり、ズべレフが2つのブレークポイントを掴む。ここで左右に振りデュースに持ち込むと、ナダルのバモースの声が響く。それでもナダルはリターンが安定しない。更にはドロップをドロップで返され、再びブレークポイントを握られると、ズべレフのバックハンドのダウンザラインショットが決まり、ズべレフが2ブレークで4ゲーム連取する。
第5ゲーム、ズべレフは30-30と押されるも、リターン精度が鋭い。更にはサービスエースでこのゲームもキープし、5ゲーム連取となる。
第6ゲーム、ナダルがようやくのキープを果たす。
第7ゲーム、ズべレフのサービンフォーザセット。0-30とされるも、ナダルのリターンが浮いたり、アウトになったりし、ズべレフにセットポイントが来る。すると、またもズべレフのバックハンドストレートにナダルは追いつけず、ズべレフが1stセットのお返しとばかりの6-1でゲームを取り、セットオールとなる。
ナダルのプレイ精度が若干落ちたにしても、ズべレフのバックハンドが強烈で、粘りのナダルが追うのを止める程の鋭さで勢いは完全にズべレフに行っています。
このままいくとズべレフが物にしそうな気配が漂いますが、経験豊富なナダルだけに、セット間でどのように立て直すでしょうか。
ファイナルセット
第1ゲーム、ナダルのサービス。ナダルはまだ焦りが見られ簡単にネットにかけ15-30とされる。更にはバックハンドリターンがネットにかかり、思わずラケットを投げそうになるという珍しい仕草をみせ、ズべレフにブレークポイントが来る。ここでzべレフの鋭いリターンをナダルが背面ボレー、更には逆ハンドボレーでこのピンチを防ぐ。ここで雨脚が聞こえるぐらいの雨が落ちてくる。ナダルのリターンがアウトになり、再びブレークポイントを掴むズべレフ。これをナダルが防ぐも、強烈な打ち合いからの前に出たナダルの横を抜くショットでズべレフが3度目のブレークポイント。更には互いが前に出るプレイで、ナダルのジャンピングボレーがわずかにアウトになり、3セット連続でズべレフがブレーク先行する形となる。
第2ゲーム、互いの選手が雨でプレイがし難いとクレームを入れる中続行される。互いの強打がなかなかラインを割らない非常にレベルの高い打ち合いも、最後はズべレフがナダルの足を止めるフォアショットを決め、キープする。
第3ゲーム、このゲームはナダルが無難にラブゲームキープで試合に留まる。
第4ゲーム、ナダルが横を抜く素晴らしいショットはあったものの、ネットに出て強打を打ち続けたズべレフが比較的楽にキープする。
第5ゲーム、ここで再び雨脚が強まり、15-0から10分程度の中断となる。すると、ズべレフのリターンがアウトになるなどし、ナダルがキープする。
第6ゲーム、ゲームを開始しようとした最中、またも雨脚が強まり今度はシートカバーをかぶせ、長い中断となる。開始後、ナダルはリターン精度があがり、それまで支配されていたラリーで逆に前に出てズべレフを左右に攻めてデュースに持ち込む。ここでズべレフがフォアリターンを力みネットにかけ、ナダルにブレークポイントが来る。すると、ナダルのバックハンド強打にズべレフのリターンが浮き、ナダルがブレークバックに成功する。
第7ゲーム、中断後からはナダルはネットに出てズべレフに強打をしかける展開に様相が変わると、ズべレフのリターン精度が今度は徐々にずれて、ナダルが容易にキープする。
第8ゲーム、ズべレフは1stサーブイン率がかなり落ちる。すると2ndサーブではこれまで深く構えていたナダルが若干前に構えるように攻撃的姿勢を見せると、ラリーでも押し、ジャンピングスマッシュでブレークポイントを掴む。更には互いの深い強打の応酬でナダルが前に出ると、ズべレフのロブショットがわずかにロングとなり、ナダルがついにブレーク先行させる。
第9ゲーム、迎えたナダルのサービンフォーザチャンピオンシップ。強烈なフォアの逆クロスがコーナーに決まり、ナダルに2つのチャンピオンシップポイントが来る。ここでナダルがスマッシュを見せるもズべレフも強打で返し踏みとどまる。更には互いに脅威の粘りのリターンの応酬も、最後はナダルのネット前に落とすボールにズべレフが2バウンドリターンで僅かに及ばず、ナダルがこの激戦を締めくくりました。
流石決勝という出来で、互いにプレイ精度が高く見ごたえのある試合でした。1stセットから2ndセットの流れでズべレフが押し切る展開も、雨の中断から前に出るプレイを増やし積極性を増した事が勝因となったように見えます。
スタッツ
セット毎に流れが入れ替わり、ファイナルセットではズべレフがそのまま行く気配がかなり漂っていただけに、ナダルの雨での中断での巻き返しは見事でした。それまで徐々にくるっていたリターン精度を気にするよりも、前に出ての攻めの姿勢を選んでズべレフに苦しい態勢を敷いていたのが終盤効いていました。
ズべレフもナダルの左右振りやスマッシュも十分対応できており、昨年同じローマの地で優勝していますが、今回の準優勝の方が確かな実力であがってきた感があり、十分に回りを納得させる出来だったのは間違いありません。尚且つ3週連続決勝のタフな中でこれだけのパフォーマンスを見せており、全仏でも体力の心配の懸念は大分払拭されているように思います。
それにしても、平均207キロの1stサーブを見せたズべレフに2本しかサービスエースを許さないナダルのパフォーマンスは目立ちませんが驚異的に見えます。
全仏オープンを来週に控えておりますが、当初クレーコートが始まった時は怪我明けのナダルとティエムのパフォーマンスが心配されましたが、この両者、並びにズべレフの3人が全仏では注目の的になるのは間違いありません。
そしてジョコビッチに連敗はしたもののプレイ精度に安定感が出てきた錦織もベスト16まで強豪との対決を避けられる17~24位のシードとなったため、今後に期待できるでしょう。