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2018 全仏 F決勝 ナダル 対 ティエム 新旧クレーキング対決

 6月10日(日)日本時間22時より、ローランギャロスにて男子シングルスの決勝が行われます。

 対戦は、大方の予想範疇のナダル対ティエムというカードになりました。

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ナダルの勝ち上がり

 ナダルの序盤戦は、初戦のボレッリ戦でブレーク先行されてタイブレークに持ち込まれるなど、ここ例年と同じくピークはあくまでも後半といわんばかりの緩やかな立ち上がりを見せます。

 しかし、2週目に入ってもマーテラーにタイブレークに持ち込まれると、シュワルツマン戦ではウイナーを連発されての3年ぶりのセットダウンを喰らうなど、いつも以上の仕上がりの悪さと取られる出来で何とか上がってきている感じもうけました。

 しかし、SF準決勝でのデルポトロ戦では抑える所のみ抑えて1stセットを取ると、後は相手の運動量や動きの問題を利用し一気に勝負を決めました。

 

 全体的な動きの質としては、確かに昨年より若干動けていないようにも感じます。しかし、そこは試合勘がずば抜けてます。不利な状況でも少しのキッカケで局面打開を図れる強さがあります。シュワルツマン戦では雨による中断、デルポトロ戦ではデルポトロが滑って股関節当りを気にした際、そこに容赦なく付け込みます。

 決勝の天候次第ですが、現状はティエムのパワーに押される場面も出てくると予想され、じっくりティエムの隙を伺う展開となるでしょう。

 

ティエムの勝ち上がり

  一方のティエムは、序盤から出入りの激しいテニスをします。セットダウンやブレークダウンを喰らいながらも最終的に勝ち上がるという感じで安定感には若干掛けるプレイで1週目を乗り切ります。

 2週目に入ると錦織戦ではパワーを抑えながらサーブの威力で突破し、ズべレフ戦ではズべレフの怪我の影響もあり呆気なく勝ち上がり、SFチェッキナート戦ではチェッキナートの奮闘振りにやや押される場面を見せるも2セットを連取するとしっかりストレートで締めくくりました。

 

 ティエムは2週目に入るとサーブの威力が増し、ストロークでも連続ミスの回数が減っています。とは言えまだ安定感があるかと言われると何とも言えない所です。

 決勝のナダル相手には隙を見せる事は許されず、最初から攻めの姿勢で行きたいと思うでしょうが、あえてじっくり入る事でナダルのペースを乱す事もできると期待します。

 マドリードで対戦した時は序盤様子見で入って大事な場面でポイントを逃さないプレイでナダルを追い詰めて勝利しました。その戦い方が出来て初めてイーブンになるという見方です。

 

過去のクレー対戦成績

 クレーの対戦成績と書きましたが、ナダル対ティエムのこれまでのATPでの対戦は全てクレーコートでのみの対戦となります。そしてナダルが6勝3敗とリード。

 しかし、ナダルからクレーコートで3勝という時点でも、ティエムのクレーでのプレイぶりは光ります。

 ティエムがナダルに勝利したのは、2016年アルゼンチンオープン、2017年ローママスターズ、2018年マドリードマスターズと、各年事に1勝しています。そしてアルゼンチンを除けばこの対戦はストレートで勝負がついています。つまりは、どちらかが流れを掴むとその流れを離さずに一気に勝負がついているという事が言えます。

 どちらの選手も相手を意識し、有利に立ったらそれを逃さないという強い意思が見えるという事でしょうか。

 

ナダル有利は変わらず

 前述したように、セットを取ったら一気に相手の息の根を止めるかのようなストレート勝負の応酬となっているこの対戦です。それはグランドスラムであっても同じでした。

 しかし、観客にすればストレートでどちらかが勝つよりも、互いの優劣が行き来するシーソーゲームを常に期待してしまうものです。

 とは言え、決勝となるとティエムはともかくナダルの集中力はずば抜けています。ナダルが少しでも優勢になろうものならその状況を手放すのにティエムは相当なパワーとタフさを要求される事になるでしょう。

 ストレートであっさりならナダルに可能性があるでしょう。昨年の状態のよいワウリンカでさえ成すすべなくボールを咥えるしかありまえんでした。

 ティエムは序盤から勝負を決めようと力んだり、焦ると思うツボとなるでしょう。逆に冷静に力を貯めるプレイでナダルのミスを待つのも悪くないと考えます。例え先行ブレークされようとも予想の範疇と言わんばかりの冷静な姿を見せる事により、いつものティエムと違うとナダルに思わせれば勝機はあるでしょうか。

 

 

試合経過

1stセット

第1ゲーム、ナダルサービス  序盤からクロスや強打でティエムを押しキープする。

第2ゲーム、ティエムのサービス ナダルのリターン強度が強く、ティエムのリターンがバックアウトになり2つのブレークポイントを握ると、ティエムの強打を全て拾い、そのリターンがネットにかかり、ナダルがいきなりのブレークを取る

第3ゲーム ナダルS ティエムはあきらめない。互いのクロスの打ち合いで打ち勝ち2つのブレークポイントを握る。すると、ナダルの浅いリターンに前に出ての強烈なフォアショットを叩き込みブレークバックに成功する

第4ゲーム ティエムS ティエムはナダルの足を止めてのショットを決めるもダブルフォルトでデュースへ、ここはナダルがリターンを打ち上げキープする。

第5ゲーム ナダルS スコア40-30からナダルがキープする。

第6ゲーム ティエムS ティエムが豪快なフォアストレートを決めるも、ナダルのバックハンドリターンが線審にアウトと判定しながら主審が覆す。見た目からもリプレイポイントに見えたが主審はナダルのポイントとし会場が大ブーイングに包まれる。ここから激しいデュース合戦になるも、ナダルのフォアリターンがアウトになり、ティエムが必死のキープを見せる。

第7ゲーム ナダルS ナダルもプレイレベルが落ちず、サーブでティエムを崩しキープする。

第8ゲーム ティエムS マドリードの監督を辞任したジダンが抜かれる。このゲームはティエムのバックハンドリターンにナダルの足が止まるなどティエムが圧倒しラブゲームキープする。

第9ゲーム ナダルS ダブルフォルトを喫するもティエムを揺さぶりキープする。

第10ゲーム ティエムS ティエムがチャンスボールのボレーをネットに掛ける。更に、力んだフォアはサイドラインを割り、更にオープンコートを作った状況からのフォアストレートをネットに掛け、ナダルに3つのブレークポイントが来る。ここでティエムのフォアが大きくアウトし、4連続アンフォーストエラーで崩れたティエム、ナダルがゲームカウント6-4で取る。

 

 第10ゲームは決定的なゲームになる可能性を秘めます。ティエムは焦りが見え、全てミスショットのみでセットを取られました。何かを変えないとこのまま行きかねません

 

2ndセット

第1ゲーム ナダルS ティエムはあきらめず強度を見せるプレイも、ミスが減らず、クロスリターンをサイドアウトし、ナダルがキープする。

第2ゲーム ティエムS ティエムの焦りは消えずネットに掛ける。するとナダルはネットに出て逆を付くボレーで2つのブレークポイントを掴む。ここは果敢なプレイでデュースに持ち込むも、ナダルは再三ネットに出てプレッシャーを掛けると、ナダルがティエムの深いクロスリターンを強打で返し、ティエムがリターンをアウトし、ナダルがこのセットもブレーク先行する。

第3ゲーム ナダルS ナダルの鋭いクロスがティエムのフィジカルを崩しキープする。

第4ゲーム ティエムS ティエムはサーブでナダルを崩し、ラブゲームキープする。

第5ゲーム ナダルS ティエムの執拗なバックへの攻めで0-30とリードする。しかしナダルの驚異的な守備からのバックのダウンザラインショットで形勢を逆転する。ティエムがやや苦し紛れのリターンエース狙いに切り替えてデュースになるも、以降2本のサーブリターンはアウトになり、ティエムが万策尽きた形のナダルキープとなる。

第6ゲーム ティエムS ティエムが下を向いてベンチに下がる姿を見せる。しかしおこはフォアスライスにナダルがリターンをネットに掛け、ラブゲームキープする。

第7ゲーム ナダルS ここに来てナダルにこの試合初のタイムバイオレーションが来る。しかし尚も長いルーティンでボールを長く突くのを止めないナダル。そしてティエムがリターンの応酬からネットに出ての絶妙なドロップを見せ、ティエムに久しぶりのブレークポイントが来る。ここでネットに出てのドロップ対決でナダルが勝ちデュースへ。ここでナダルの低く鋭いクロスショットでティエムを崩し、ナダルがしっかりとキープに成功する。

第8ゲーム ティエムS スコア40-30まで迫られるも、ナダルのサーブリターンがネットに掛りティエムがキープする。

第9ゲーム ナダルサービンフォーザセット これまでよりもライン付近まで前に出て構えるティエム。しかしリターン精度が悪く、ナダルに2つのセットポイントが来る。そして最後もティエムのリターンがあっさりアウトになり、ナダルが2セットアップで11回目の優勝に王手をかける

 

 ティエムは大きく崩れてはいないものの、ブレークして以降はややセーブした形でポイントのみで力を出すナダルに対して、ティエムは常に全力での勝負も、その都度ミスも増えたりと安定せず、このまま行く流れは続いています。

3rdセット

第1ゲーム ティエムS ティエムの1stサーブは相変わらず良くない。1stポイントは互いの深いクロスの打ち合いでティエムが僅かにアウト。更には重いスピンリターンでティエムを崩し0-30に。更にはクロスに回り込んでのフォアリターンがネットにかかりいきなりの3つのブレークポイント。ここでナダルの際どいショットが連続してアウトとなりデュースへ。更にはティエムのフォアリターンがアウトで4度目のブレークポイント。これをセンターのサーブで凌ぐ。ナダルはティエムの上を超すショットを狙うもティエムがジャンプして追いつく。更には深いリターンでナダルを崩し、試合に留まる必死のキープを見せる。

第2ゲーム ナダルS ティエムの素晴らしいキープで会場はドミニクコール(ティエムのファーストネーム)に包まれる。ティエムも体が動くようになるも、ナダルはネットプレイの精度の高さを見せキープする。

第3ゲーム ティエムS ティエムの厳しいショットもナダルが対応するなどしブレークポイントを握る。ここはクロスリターンからネット前に落としデュースに。更に左右振りと強打でナダルを押すティエム、しかしナダルはティエムのショットを読みフォアリターンを炸裂させ白熱した展開に。ナダルのプレッシャーに押されてティエムがリターンミスし2度目のブレークを掴むと、ティエムのリターンが浮きサイドラインを割り、ナダルが優勝に向けたブレークを取る

第4ゲーム ナダルS ナダルが30-0とした所で、ナダルが手首を抑えてドクターからの診断を受ける。手首を痙攣させる様子が見えるもののコートへ戻る。ここでサーブを1つした所で手首を振り明らかに異常がみられる。しかしプレイ強度に落差はなくラブゲームキープする。

第5ゲーム ティエムS ナダルのリターンが若干狂いが生じてるのかネットに掛けるシーンも。ティエムが楽にキープする。

第6ゲーム ナダルS ナダルは再びトレーナーを呼びマッサージを受ける。その注目のサーブ。1stポイントから長いラリーで体調に問題はなさそうな雰囲気。ナダルのフォアリターンは浅いものの、上下左右に自在にショットを操るナダルは最後もボレーで沈めラブゲームキープする。

第7ゲーム ティエムS 上空は厚い雲に覆われ始めたローランギャロス。ティエムのショットが狂い始め0-30に。ナダルが深い所からのドロップショットで2つのブレークポイントを掴む。ティエムのワイドサーブにナダルがネットすれすれに鋭いリターンを決め、ナダルが2ブレークアップで一気に試合を決めにかかる

第8ゲーム ナダルサービンフォーザチャンピオンシップ ナダルはこのセット3度目のトレーナーを呼び、肩から手首にかけてマッサージを受ける。1stポイントはティエムのリターンが大きくアウト、更にはティエムのバックハンドストレートがサイドアウト、ナダルのセンターへのサービスで3つのチャンピオンシップポイント。ここでティエムの粘りのプレイでデュースまで持っていく。長いラリーからティエムのリターンが浮き4度目のチャンピオンシップポイント。ここでナダルの大外からのリターンがわずかにラインを捉えず。ティエムのフォアリターンがサイドアウトし5度目のチャンピオンシップポイント。ここでティエムのサーブリターンがアウトとなり、ナダルが全仏11度目の優勝の偉業を成し遂げました。

 

 いつもはクレイに寝転ぶナダルだが、今日はティエムのリターンがアウトになるのを確認し、両手を挙げ仁王立ちのパフォーマンスとなりました。

 

スタッツ

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 1stセット押しながらも最後に捲られてそのままストレート勝利はSFでのデルポトロ戦に近い試合展開でした。

 しかしティエムはデルポトロよりはフィジカルの不安がないだけに強打で何度もナダルを苦しめました。それが第3セットの手首の痙攣にもつながった感じです。最終ゲームもあきらめずにブレーク出来たら何かが起こりそうな雰囲気がありましたが、そこを締めるのがビック4たる所以という所でしょうか。

 1stサーブの入りが悪いティエムは、それだけナダルのプレッシャーを受けていたという事でもあります。そしてナダルが2ndサーブを46%しか決めれないぐらいにティエムのプレッシャーは最後まで強かったです。今後どんどん経験を詰めば数年後にはナダルの衰えとティエムの成長が逆転する時が来ると感じる出来ではありました。

 ティエムは深いポジション取りでは部が悪く、2ndセット途中ではやや前目に構えて全てリターンエース狙いの博打をしましたが、そうとわかるやナダルはスピン量を増やしてネットに連続で掛けさせるなど、ナダルの相手を見る目は流石の一言というシーンもありました。

 ナダルは昨年程の圧倒的強さというよりは、経験によって要所を抑えて勝ったというイメージです。昨年も要所は抑えてましたが今年はより苦労した感じは受けました。そしてそれがラデシマ(11度目の優勝)達成時の壇上に上がった際の涙に現れているのではないかと感じます。

 

 ナダルはウンデシマ(12度目の優勝)を狙うのかどうかが、来年の見どころになりそうですが、それまでにティエムは結果を残せていないハードでどのような活躍をするかにも注目します。

 そして、まだまだグランドスラムの戦いに慣れていないズべレフはどこまでアジャストしてくるか、錦織は怪我なく再びトップ10に返り咲けるか、後半戦も見所は尽きないです。

 

 

 

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