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2018 ウインブルドン F決勝 ジョコビッチ 対 アンダーソン  ジョコビッチ復活の優勝

 7月15日、日本時間22時から行われるウインブルドン決勝は、両者壮絶な勝ち上がりを見せた両選手となりました。

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アンダーソンの勝ち上がり

 アンダーソンはかなりのタフドローをこなしてきました。

 2回戦グラスでサーブが冴えるセッピにやや押された時間がありながら物にし、4回戦ではモンフィスとの壮絶な打ち合いを制しました。

 そして何といってもQF準々決勝は今大会の大本命のフェデラーにマッチポイントを握られながらも2セットダウンからサドンデスで逆転勝利を収めました。

 更には準決勝イズナーとの対戦ではフルセットのサドンデス突入、サドンデスに入ってからは常にイズナーから有利な状況を得るも中々物に出来ず、結局はファイナルセットは26-24セットの大熱戦の末に勝利しました。

 

ジョコビッチの勝ち上がり

 ジョコビッチは序盤戦を凌ぎ、3回戦のエドマンド戦は、今年のマドリードで敗れているのかやや神経質になってしまう一面を見せるも、次々に深いストロークを叩き込み勝利します。

 QF準々決勝の錦織戦は第2セットでやや調子を落としてセットを取られるものの、3セット目からは集中力を保ちそのまま勝利しました。

 そしてSF準決勝、下馬評でもナダル有利と言われた中、想像を大きく上回る強度と粘りのあるテニスでナダルと真っ向勝負を挑み、2日間かけて行われた試合は、こちらもファイナルセットのサドンデスにもつれ込み、最後は終始ナダルを追い詰めたジョコビッチが勝利しました。

 

共に壮絶なSF準決勝を勝ち抜く

 共にハードなSFを勝ち抜いた両者ですが、3日連続で試合となるジョコビッチの体力が気になります。

 しかしながらアンダーソンも6時間超の試合をしています。体力面では両選手不安を抱えてのスタートとなってしまいそうです。

過去の対戦成績は5勝1敗でジョコビッチが上回る

 過去の対戦では5勝1敗で上回っています。そしてウインブルドンでも2015年に対決しており、この時はフルセットでジョコビッチが勝利しています。

 とは言え、当時全盛期だったジョコビッチを相手にフルセットの戦いを演じた事からもグラスコートとの相性の良さが伺えます。

 ジョコビッチの調子は大分戻り、特にナダル戦では大きく落ち込む時間が全くなく高い強度のプレイを5時間も続けていました。その強度をもってしてようやく倒せるのがビック4同士の戦いたる所以を見せつけました。

 

 この試合は両者の体力回復がどのようになるかにも影響します。

 アンダーソン側からすればサーブをとにかく入れてショートポイントで試合を進めたい所です。

 ジョコビッチの方は逆にサーブをしっかりリターンしてからのストロークで勝負したい所ですが、ジョコビッチに関していえば様々な戦術に対応できる分、劣勢になっても立て直しがきく事が予想されます。

 とは言え、ここ1年で顔を出す不安定さが出ないとも限りません。

試合展開

 試合は予定通りの時間に選手入場が行われ、22時10分当りに開始されます。

1stセット

 第1ゲーム、アンダーソンのサービス。いきなり長りラリーからスタートするも、1stサーブが入らないアンダーソン、更にはリターンでミスが目立ちブレークポイントを握られると、あっさりとブレークを許す展開に。

 第2ゲーム、ジョコビッチはラリーになるとそこまで強くないリターンでもアンダーソンがミスを連発してくれるため、余裕のキープとなる。

 この時点で観客は両者の出来を察してアンダーソン寄りの応援となる。

 第3ゲーム、メンタル的にいきなり窮地に立たされたアンダーソンですが、ここは声を出し鼓舞し、ラブゲームキープする。

 第4ゲーム、これに対してジョコビッチは淡々と声も出さずに楽にキープする。

 第5ゲーム、アンダーソンが渾身のリターンを見せてもジョコビッチが全てリターンすると先にアンダーソンがミスをする展開となり2ブレークポイントを掴むと、アンダーソンの深いリターンもしっかりリターンし、前に出てきたアンダーソンのボディーへのリターンでネットに掛けさせ、貫禄の2ブレークアップとなる。

 アンダーソンはタオルを顔に当てて考え込む。その仕草はローランギャロスで見せたナダル対ワウリンカでのワウリンカの苦悶と被る情景。

 第6ゲーム、アンダーソンがリターンしてもジョコビッチは左右に深いショット、更にはリターンが浮くと前に出てのボレーと隙のない攻めで余裕のラブゲームキープを見せる。

 第7ゲーム、アンダーソンの渾身のサーブにもコーナーに深々とリターンを連発するジョコビッチ。それでもサーブで押しこのゲームはキープする。

 第8ゲーム、ジョコビッチのサービンフォーザセット。ジョコビッチは無理のないプレイで推移すると、アンダーソンがリターンをミスする展開はかわらず、あっけなくゲームカウント6-2でジョコビッチがセットアップする。

 ここでアンダーソンは右肘の当りをトレーナーに治療する事となる。

 メンタル面や体力面を考えても既にアンダーソンには後がありません。ジョコビッチは明らかにセーブしたプレイをしており実際ジョコビッチにはまるでプレッシャーの掛る場面がありませんでした。ジョコビッチに強度を強いたり、あるいは精神を揺さぶる攻めをしていかない限りはこのまま試合終了となるでしょう。

 

2ndセット

  第1ゲーム、アンダーソンのサービス。ジョコビッチはセンターへ丁寧にリターンするとアンダーソンが力んでエラーを連発。自分を鼓舞するカモンの声を連発するも、ジョコビッチはミスをしない。ジョコビッチが2つのブレークポイントを掴むと、ジョコビッチのラインに掛る深々としたリターンを制御できず、早くも試合を決定付けるブレークを奪う。

 第2ゲーム、アンダーソンのカモンの声も悲壮感が漂うこのゲーム、ジョコビッチがポイントを取っても全く静かな会場、ジョコビッチはそんなアンダーソンの精神を揺さぶるように長いルーティンからのワイドサーブでアンダーソンがリターンを全てアウトにさせてのキープで試合を支配する。

 第3ゲーム、アンダーソンのサービスエースで観客が沸きあがる。しかしリターンで悉くショットがミスしデュースに。更にはラリー中にアンダーソンがボールを落としてポイントやり直しになる一幕も。ここで長いラリーでこの試合初めてのポイントを取ると、厳しいラリーからネットに出てポイントを取り、必死のキープで会場が盛り上がる。

 第4ゲーム、長いラリーでアンダーソンがポイントを取るようになると、今度はジョコビッチがサーブ強度を強めてアンダーソンに満足にリターンを許さないなど自在に試合をコントロールするジョコビッチがキープする。

 第5ゲーム、ストロークが良くなってきたかに見えたアンダーソンだが、その直後にミスを連発、更にはダブルフォルトで2つのブレークポイントを握ると、アンダーソンのリターンが大きくアウトし、ジョコビッチが鋭い眼光でにらみつける2ブレークアップを見せる。

 第6ゲーム、ジョコビッチはスライスとフラットのリターンでアンダーソンの打点を狂わせるショットをうつも、アンダーソンも素晴らしいリターンを連発しデュースに。しかしジョコビッチは先にミスらずにこのゲームもキープする。

 第8ゲーム、ジョコビッチのサービンフォーザセット。アンダーソンがミスショットを連発してリード、しかし粘りのリターン、更には逆を付くショットで30-30に持っていく。更にはワイドサーブへ鋭いアングルリターンでジョコビッチを崩し、この試合初めてのブレークポイントがアンダーソンに来る。ここで互いに深いリターンでアンダーソンのリターンが僅かにアウトしデュースに。このゲーム長いルーティンのジョコビッチは鋭いバックハンドリターンで振りぬくと、最後はワイドサーブでこのセットも6-2でジョコビッチの2セットアップとなる。

 1stセットに比べてアンダーソンもラリーが出来るようになってきたものの、ジョコビッチはその都度プレイスタイルを替えて対応し、ブレークを許さずに盤石の態勢で進んでいます。

3rdセット

 第1ゲーム、アンダーソンのサービス。やや吹っ切れた形のアンダーソンはなんとか踏みとどまりキープする。

 ここから互いのキープが続く

 第8ゲーム、ジョコビッチのサービス。アンダーソンが粘りのリターンでライン際に決めブレークポイントを握るも、ジョコビッチはサーブで押しこれを凌ぐ。ジョコビッチは大きく雄叫びを上げる。

 第9ゲーム、ブレークポイントを逃したアンダーソン、ポイントを先行させ、更に2ndサーブでセンターへのサービスエースを決める。更にはジョコビッチのリターンを切り替えしキープを見せる。

 第10ゲーム、ジョコビッチがダブルフォルトを犯す、更には前に出るアンダーソンが30-30とする。更にはダブルフォルトでアンダーソンにこの試合初のセットポイントが来る。ここはジョコビッチがアウトスレスレの深いリターンでアンダーソンを崩しデュースに。更にジョコビッチがこのゲーム3度目のダブルフォルトでアンダーソンに2度目のセットポイント。しかしここでも深い切り返しのリターンで凌ぐ。ここで完璧な組み立てからフォア逆クロスをアウトするアンダーソン。アンダーソンはこのポイントのチャレンジでこのセットのチャレンジの権利を失うと、ジョコビッチがセンターへのサービスでこのセットをキープし、雄叫びを上げる。

 第11ゲーム、注意が必要なこのゲーム、1stポイントはサービスエースが決まる。ここからサーブが冴えるアンダーソンがラブゲームキープする。

 第12ゲーム、動きではややアンダーソンにキレがある時間が続いているこのセット。1stポイントはアンダーソンは攻めのリターンでポイントを取る。ジョコビッチは1stサーブが入らなくなってきている。更には前に出たジョコビッチの横を抜くショットで0-30と観客をおおいに沸かせる。ここでセンターサーブを決めるジョコビッチ。更にはジョコビッチのライン際のリターンが僅かにはずれ、アンダーソンに3度目のセットポイントが来る。ここはワイドサーブで1つ凌ぐ。更にはセンターからコーナーへのリターンでアンダーソンが追いつけずデュースに。アンダーソンが強烈なリターンで5度目のセットポイント。しかしセンターへのリターンがアウトでこれも凌ぐ。対角に振ったリターンでジョコビッチがアドバンテージ。しかしアンダーソンのリターンがライン深々と返り譲らない。前に来たアンダーソンを抜くジョコビッチ。最後はセンターへのサービスエースで壮絶な12ゲームを終えたこのセットはタイブレークに。

 タイブレーク 左アンダーソン 右ジョコビッチ

 1-0 アンダーソンがフォア逆クロスを華麗に決める

 1-1 アンダーソンを対角に振るショットを決める

 1-2 アンダーソンのクロスリターンがアウト

 1-3 アンダーソンの右を抜くショット。ミニブレーク

 1-4 ジョコビッチの執念のリターンで2ミニブレーク

 1-5 ジョコビッチがサーブでアンダーソンを崩す

 2-5 ジョコビッチのアングルリターンがサイドアウト、1ミニブレバック

 2-6 クロスラリーからのアンダーソンのリターンがネットにかかり、ジョコビッチに4つのチャンピオンシップポイント

 3-6 アンダーソンがグランドスマッシュを決める

 FIN ジョコビッチのセンターへのサービスをアンダーソンがネットに掛け、この瞬間ジョコビッチはコートにしゃがみ込みじっくりと喜びをかみしめる。更には悪手後にお馴染みのラブ&ピースパフォーマンス、更には陣営に向けて大きなガッツポーズを見せる。

 

スタッツ

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 第3セットはアンダーソンも持ち直しただけに、あのプレイが第1セットからできていればという感じに思った人も多いでしょう。

 しかし、それも含めて最後までジョコビッチの手の中にあったという試合とも言えます。去年からのジョコビッチであればあそこでエラーが連発して自滅も考えられましたが、今大会のジョコビッチはそこで連続してエラーをしてもしっかり立て直していました。厳しい時はキツイコースにサーブを決めていましたし、ナダル戦でもそれは顕著でした。実際アンダーソンに第3セットだけで5度のセットポイントを握られながらもそれをサーブや強烈なリターンで凌ぎました。この勝負強さこそビック4たる所以であり、本人も大きな自信を手にした事でしょう。

 敗れたアンダーソンは、あのまま何も残らないまま無残に敗れる事なく第3セット盛り返しましたが、この状態のジョコビッチに勝つには十分ではありませんでした。ジョコビッチの威圧もありサーブの調子がこれまでの試合に比べて良くなく、かつ220キロにも及ぶサーブも難なくジョコビッチがリターンするため、どんどん打つ手がなくなっていくのが分かる経過でした。第3セットのような開き直りに体がついていくのに時間はかかりましたが、見せ場を作ったという意味では全米よりも進歩したとも言えます。1年の間に2度もグランドスラムの決勝に立てた事により、今後もトッププレイヤーとしてツアーを引っ張る立場になりました。

 

ジョコビッチ「最高の気分です。僕の子供が僕の事を応援してくれていた。これは初めての経験なんです。これまでは会場にこれませんでしたが、このように近くで見てくれてる所で試合を見せられて幸せに思います。ケヴィンもおめでとう、QF、SFとても大変な試合を乗り切って決勝に来てくれました。私も大変でしたがよい決勝ができました。おめでとう。 そうだね・・。確かに今は言えるけど、とても大変だったよ。自分が進んでる道は正しいと信じてやるしかなかった。怪我もあったし、ツアーを長く離れていたし、どうやったら復帰できるかわからない時期すらありました。そして、、、復帰して、グランドスラムの舞台に立てて、そしてこうしてトロフィーを掲げる事が出来て幸せです。今年も芝の味を確かめてしまったよ(笑)。生涯を通してここで4回勝てたのは本当に素晴らしい事。世界中の人々に感謝してる。ここでプレイできてよかった。」

 

 そう話すジョコビッチに涙の姿は一切なく、ずっと笑顔が絶えないスピートとなりました。涙を流す程の苦労はあったはずですが、これからを見据えてるように見えます。

 

結果が自信を生む

 ジョコビッチの復活は難しいと考えていましたが、ウインブルドンの試合をやっていくうちにどんどんと調子が上がっていったように思います。そしてそれはナダル戦で完全なものになりました。ナダルがサスペンデットを狙って早い勝負を挑んで強烈なリターンを叩き込む中、これに真っ向から対応し、しかもほとんどミスなくスーパーショットを互いに連発するなど、歴史にも残る試合を披露しました。この1戦で確実にジョコビッチの中の何かが目覚めたのを感じました。

 エドマンド戦や錦織戦でもこれまでの試合よりは安定感はあったものの、まだ悪い時のジョコビッチも時折り顔を覗かせていました。それがいきなりミスを連発した第2セットのセットダウンに現れていました。しかし、そこであきらめずしっかりと深いリターンを勇気を持って打ち込んでいるうちに、それが自然とできるようになりました。それがナダル戦です。

 今後はこの大会の自信をどれほど確固たるものにするかに注目が集まる事でしょう。1大会でも早期敗退があるようですと、また自信を無くす危険性は去ってはいません。そういった事を含めて今後のジョコビッチにはますます注目が集まる所でしょう。

 

ファイナル出場を目指す錦織は、しかし・・

 そして、まだまだジョコビッチの壁に悩まされる事になるだろう錦織は、これから彼らと深いラウンドで当たるように、もっとランキングを上げる事が求められます。後半のハードシーズンは失効ポイントがシティーオープンのSFのポイントのみです。

 今年のファイナルはジョコビッチの優勝により、既にランキング8位で2900ポイント近くとなっています。これは昨年のジャックソックが滑り込みでファイナルに入ったポイントより既に300ポイント程高くなっています。まだ後半のハードシーズンが始まっていないにもかかわらずです。

 従って、今年のファイナルは4000ポイント当りの攻防になることが予想され、それを考えると錦織のツアーファイナル出場はかなり厳しく現実的ではありませんが、本人はあきらめておらず、その気概を今後のツアーでも見せてくれる事でしょう。

 

 次のツアーは7月下旬からのスタートとなります。

 

 

 

 

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