2018 ATP1000 インディアンウエールズマスターズ フェデラー対デルポトロ
2週間にわたって繰り広げられるインディアンウエールズマスターズも残す所決勝のみとなりました。
土俵際で踏ん張ったフェデラー
ここまで開幕からの16連勝。全豪での決勝でチリッチとフルセットの死闘を演じたのを除けばフルセットにもつれ込んだロビン・ハーセ戦も含めてほぼ盤石と言える出来でここまで順調にきたフェデラーでしたが、SFのチョリッチ戦はそれまでとは全く一線を画す試合となりました。
チョリッチはフェデラーに対して攻めと守りのバランスが良く、数字上上回るアンフォーストエラーもここぞでは犯さずに、序盤から息詰まる展開となります。更にはフェデラーのバックサイド側にボールを集めでベースライン付近で打ち合うなど、ほぼ互角の展開を見せると、フェデラーのバックハンドショットがネットに掛るようになり、チョリッチが1stセットを制します。
2ndセットもギアが入らないフェデラーに対して厳しいコースに打ち分けるチョリッチは早々にブレークを奪い、あっさりスコアも2-4とリードします。しかし、ここからチョリッチが勝ちを意識したのかフォアのリターンを立て続けにミスし、一気にブレークバックされ、そのまま4ゲーム連取でフェデラーが勢いを取り戻すセットオールになった・・・。かと思いました。
ファイナルセット。しかし、チョリッチは再び気を引き締め、ラリーではフェデラーのミスを待ちつつも、前に出てくるフェデラーの頭上を抜くショットを見せるなどしてファイナルセットもチョリッチが2度に渡りブレーク先行を見せ、会場の空気を凍り付かせます。
絶対絶命のフェデラーはそれでも気持ちだけは切らしません。キープに対して大きく声を上げるなど、この試合をあきらめない気迫を見せると、リターンゲームで、チョリッチにラリーで押されながらも形勢逆転のショットを見せ、更にチョリッチもその気迫に押されたのかミスショットを犯しブレークバックに成功すると、第10ゲーム、1ポイント毎に気合をみなぎらせるなどフェデラーの気迫が勝り、大逆転で勝利を収めました。
1stゲームの第10ゲーム当りからファイナルセットの第7ゲームぐらいまでほぼチョリッチが試合を支配していただけにかなりの経験となったでしょう。2ndセットからはチョリッチが1stサーブをミスしただけで観客がざわつくなど完全にアウエーの雰囲気の中でよく頑張ったチョリッチです。その雰囲気も超えていかなければいけないのがトップ選手という事でしょう。
何れにしてもフェデラーは自己最多の開幕17連勝を更新し、マスターズの決勝に挑みます。
コールシュライバーの猛攻を凌ぐ
デルポトロはアメリカシーズンでメキシコのアカプルコオープンでミーシャ・ズべレフ、フェレール、ティエム、アレクサンダー・ズべレフ、決勝は好調のアンダーソンと超タフドローを制して優勝し、このインディアンウエールズに乗り込んできました。
シード勢が序盤で悉く散っていく中でもデルポトロは安定感を見せつけて上がっていきます。
しかし、QFのコールシュライバー戦は死闘となります。デルポトロのフォアを華麗にカウンターで跳ね返し続けます。スライスで凌ぐにもコールシュライバーはその反動を利用したカウンターでウイナーを量産し、試合展開もコールシュライバーが押す展開となり、セットダウンします。
ネットプレイも対策され、更に2ndセットも劣勢に立たされるも、コールシュライバーが若干落ちた所を見逃さずにセットオールとします。
ファイナルセットも一進一退の攻防が続くものの、コールシュライバー相手にしぶといテニスを披露すると、コールシュライバーのエラーが増え、デルポトロが何とか逃げ切ります。
強打のデルポトロのショットをこれ程うまくカウンターできる選手はそこまでいません。それだけにデルポトロもゲーム間で戦術を変えて必死に勝つ道を模索していました。チョリッチ戦のフェデラー同様に、トップ選手は勝ちに対して現実を見て対応します。そこに凄みを感じます。
3月19(月)5;00開始予定
試合は、月曜日の朝方に開始予定です。同じ大会の女子で決勝に上がった大阪なおみ選手の試合の後に行われます。
過去の対戦で18勝6敗でフェデラーが大きくリードするも、ここ最近は簡単な試合にはなっていません。
フェデラーやナダルに対抗できるのは、ティエムやズべレフ、ディミトロフよりは、チリッチとデルポトロの方が可能性があると見ていましたが、全豪でチリッチを退けた今、デルポトロがそれを成し遂げる事ができるでしょうか。
フェデラーの不安はチョリッチとの激戦の疲れです。それまで中1日の試合だったのが連戦となります。体力の回復は不安要素の一つとなるでしょう。
デルポトロはSFは労せずラオニッチを退けましたがアカプルコからの連戦が続いており、SFでもそれほど動きはよくなく疲れは見えました。
互いが決勝で疲れを見せない熾烈な戦いを見せる事を願っています。
試合内容
開幕当初から1番人気と2番人気と目されていた選手の決勝とあって、入場から観客の声援がヒートアップする。
1stセット
序盤から緊迫した展開を見せる。デルポトロは早い攻めのフェデラーに対してスライスを織り交ぜて対抗、しかしフェデラーもそのスライスをバックハンドの強打で抜くなど一進一退の攻防が続く。
迎えた第5ゲーム、フェデラーのバックハンドは今日も不安定でエラーを繰り返し、デルポトロに3つのブレークポイントが来ると、あっさりとデルポトロがブレークに成功する。
このセットはその後、互いにブレークポイントを掴む事もなく、淡々と進み、4-6でフェデラーは1stセットを失ってしまう。
2ndセット
形勢が不利と見たフェデラーはデルポトロのリターンを強打で返すとこの日最初のホメアツ!が炸裂し、2BPを握る。しかしこれをデルポトロの連続のフォア強打でしのぎ切る。
以後は互いに譲らぬ展開も、デルポトロが比較的楽にキープしていく。すると観客は昨日のチョリッチ戦と同じような雰囲気になっていく。
第10ゲーム、5-4で迎えたデルポトロのサービスゲームで、フェデラーがギアを上げ一気に早い勝負で押すと2つのセットポイントを掴む。しかしここでもデルポトロはファールを恐れないフォアの強打とバックハンドボレーを華麗に決めて凌ぎ切りタイブレークへ。
先にミニブレークを奪われたフェデラーだが、苛つきを見せながらも強打を繰り返すフェデラーは巻き返し、逆に3つのセットポイントを握る。更にはライン際ギリギリにフェデラーが決めたかと思ったショットはデルポトロのチャレンジによりアウトに。フェデラーはチャレンジが遅いと文句を言い、観客も騒然となる。その観客を制するようにとデルポトロは主審に要求し異様なムードに。するとこのセットポイントを全て凌ぎ、かつフェデラーのダブルフォルトなどもあり、今度はデルポトロにチャンピオンシップポイントが来る。しかし力みすぎたデルポトロの強打はネットに掛かり、冷静さを取り戻したフェデラーが決め、セットオールとなる。
ファイナルセット
会場の雰囲気や現在の状況に明らかに不満があるデルポトロは鬼の形相で何度も主審に詰め寄る。しかし会場はフェデラーの応援一式に染まる。デルポトロの1stサーブをミスすると観客が拍手をするなど騒然とする。
デルポトロはやや強引な攻めが目立つのに対してフェデラーはここぞとばかりにドロップショットを多用し、デルポトロに心の安らぎを与えない。
第9ゲーム、4-4で迎えたデルポトロのサービスゲーム。フェデラーはデルポトロを責め、バックハンドボレーなどで2度のブレークポイントを掴むと、デルポトロの2ndサーブをバックハンドで叩きフェデラーが終盤でこの試合初めてのブレークを奪取する。
第10ゲーム、フェデラーのサービンフォーザチャンピオンシップ。サービスエースを決め3度のチャンピオンシップポイントを掴むも、その都度詰めが甘くデルポトロの反撃を許し、最後はデルポトロのフォアショットが炸裂し土壇場のブレークバックに成功する。
フェデラーもデルポトロを観客を落ち着かせられない主審に何度か抗議するなど互いに勝負熱の高い決勝となり、ファイナルセットもタイブレークにもつれ込む。
緊迫のタイブレークになると思われたこの試合、しかし、フェデラーはここで2度のダブルフォルトを犯すなど、デルポトロが労せずポイントを重ねていくと、会場の雰囲気は静まり返る。デルポトロが5つのチャンピオンシップポイントを握ると、最後はフェデラーのフォアリターンがアウトとなり、デルポトロが自身ツアー初のマスターズ優勝を果たすとともに、フェデラーの開幕連勝は17でストップしました。
デルポトロは両手を天にかざし、その勝利の余韻に浸ります。そして勝利のカメラサインには、先月亡くなったばかりの愛犬の名前の「シーザー」を形どります。
フェデラー | Total | デルポトロ |
12 | エース | 10 |
5 | Dフォルト | 1 |
61 | 1stIN(%) | 63 |
74 | 1stWON(%) | 75 |
53 | 2ndWON(%) | 67 |
51 | WINNERS | 42 |
45 | ERRORS | 24 |
1/4 | BREAK | 2/5 |
試合を通じてミスが少ないデルポトロに軍配が上がったという感じでしょうか。それでも随所では素晴らしいプレイがあり、互いに真剣勝負に相応しくピリピリとしたムードを強く漂わせたのも良かったです。試合時間は2時間42分と、試合時間が短いのに定評のあるフェデラーにこれほどのロングマッチになったのを見てもデルポトロがいかに粘り強かったかを物語っています。
アメリカマスターズは今週よりすぐにマイアミオープンがスタートします。この大会が終了すると本格的にクレーシーズンに突入します。
フェデラーはマイアミに参加するのか?その他の選手の奮起は?シード勢が簡単に落ちすぎている現状は、マイアミもフェデラーとデルポトロにかなり比重が大きい大会とはなりそうです。