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2018 W杯 日本代表グループ突破 論点整理 自身の失敗を認めた西野監督

 現在ワールドカップのグループリーグを突破し、決勝トーナメントが行われようとしております。

 様々な予想外の出来事で楽しませてくれている今回のワールドカップですが、中でも日本代表は戦前の予想を覆す程の大きな論争を巻き起こす火種となっています。

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前段階のおさらい

2か月前の監督交代で国民の期待を究極に下げる

 おそらく既に忘却されている人もいるかと思いますが、日本代表はW杯の2か月前というタイミングでハリルホジッチ監督を更迭しました。

 この件に関しましては双方のいい分も激しくぶつかり、また選手間でも様々な意見や感情があり、裁判問題にまで発展しています。

 そして後任は、本来は日本代表監督を補佐する立場の西野がなったことも大きな論争を呼びました。

 一連の流れから選手からの圧力に協会が結託して監督を下したという見方が強まり、大きな批判とともに、日本代表を素直に応援できないというイメージが広がったという印象です。

 

まさかの開始3分のハンド退場+PK

 その後西野監督が読み上げたW杯選抜選手には若い選手がいなくベテランで構成された事、またその後の親善試合もさしたる結果を残せない事も手伝い、W杯前の日本代表の期待と関心はかなり低かったはずです。パラグアイ戦から良くなったという人もいますが、パラグアイの寄せの甘さを見ればこれを+材料ととる人はメディア情報に流される人以外はほとんどいないと思われる内容ではありました。

 

 そして臨んだ初戦のコロンビア戦では開始早々日本は大迫がビックチャンスを迎え跳ね返りを香川がシュートした所をコロンビアのサンチェスが手を出しレッド一発退場+PKという望外の展開となりました。これを決してPKが得意ではない香川が真ん中付近に沈めてここから全てが始まりました。

 その後は11対10を思わせないコロンビアの強度に押され、更にファルカオの狡猾なファールによりFKから同点に追いつかれます。

 しかし、予想以上に前半でパワーを使ったコロンビアは後半序盤から足が止まり、更には交代で入ったハメスロドリゲスが明らかに体調が万全でなく、香川と交代で入った本田のコーナーキックから大迫が頭を振り切らずにコントロールしたヘディングで勝ち越しに成功。

 試合はそのまま日本がコロンビアに勝利するというまさかの展開となります。

 

勇敢に立ち向かう日本代表

 2戦目はセネガル。ポーランド戦を見る限りフィジカルとスピーディーな攻めに組織的な動きを見ても日本は相当に厳しい戦いが予想され、現に2回もリードを許しました。

 しかし、試合内容は一方的にフィジカルで圧倒されるという展開ではなく、日本も十分攻めの形が出来、一方的に押し込む時間帯も結構ありました。そして、乾の素晴らしいゴール、またしても交代で入った本田が岡崎のつぶしからの冷静なシュートで2度のビハインドを追いつき最後まで勝利を狙う猛攻を見せました。

 この戦いは戦前の不利が予想されたのもあり、かつ内容ではセネガルを上回る出来を披露したのは誰の目にも明らかで、世界中に称賛される試合となりました。

 

ポーランド戦での試合の立ち回り

 これまでの2戦の結果により、日本は引き分け以上でグループリーグ突破、負けても他会場の経過で突破できるというかなり有利な状況となって、3戦目のポーランド戦を迎えました。

 ポーランドは既に敗退が決定しており、2試合を見る限りチームの統率も取れてない状況であり3戦目で劇的にパフォーマンスを上げるのが考えにくい状況であったため、やや楽観した空気が試合前流れました。

 しかしそれでも個々の能力はポーランドが上で油断ならない試合とも捉えられていました。

 その大事な試合で西野監督はまさかの先発6人交代を敢行しました。この先発交代の意図は現在もまだはっきりとは表現できる人はいないでしょう。建前は主力選手の休養でしょうが、まだ突破が決まってない段階では大胆すぎますし、変わった選手が低調であれば責任は免れません。

 

 その試合ですが、ポーランドは序盤から明らかに緩い立ち上がりで日本は何度もチャンスを演出しました。

 しかしながら交代で入った選手はW杯の独特な雰囲気に完全に飲まれてしまったプレイを披露します。明らかに守備の出足が遅い槙野、守備に奔走はするも攻撃では形を見せれない宇佐美、回りが見えずチャンスを逃す武藤、マークの受け渡しが不十分で簡単に裏を取られる山口、前半でほぼパワーを使い果たした岡崎、そして攻守に頑張りを見せたが精度を欠いた酒井高徳と6人が普及点以下のパフォーマンスにより、勝負をつけれた試合を決めきれずに前半を終了します。

 

 後半に入るとポーランドは更にリラックスするとともに、両サイドと中央の攻撃を使い分けて日本を自陣に釘付けにする展開となります。

 そしてセットプレーからベドナレクがシュートを決めてポーランドが先制します。この時に日本の守備は後で吉田が言うようにゾーンで守っていたが完全に空いてしまったというように、左側の槙野を含めた4人が寄せるにもかかわらずほぼフリーの状態で打たれました。

 この時点でコロンビア対セネガルが0-0であり、日本は敗退ゾーンに突入してしまいました。

 日本の歯車は完全に狂い、攻撃に出ようとしてもそれほどマークがきつくないポーランドの中盤に引っかかり、あるいはパスミスをするなど完全に浮足立ちました。更には前掛りになってる所からボールを奪われ、レバンドフスキーに前を迎えてPA内に突入させるなど、絶体絶命の状況を何度か作り出させてしまいます。

 しかし、後半29分にコロンビアがミナのゴールで先制する情報を日本が得ると西野監督は長谷部に用意を命じ、残り15分余りリスクのないボール回しに終始します。このまま試合が進行すれば日本はセネガルと総得点、得失点で並びイエローカード差で突破が決まるからです。

 結果試合はそのまま0-1で終了し、コロンビア対セネガルはセネガルが猛攻をしかけるもののコロンビアのディフェンスラインも固くこちらもそのまま1-0で試合が終了し、日本は辛くもグループリーグ突破を決めました。

 

 

論点整理

 最終戦に関して、各ポイントに対して箇条書きします。

 

1 先発6人交代  批判度 85

 現地は当日最高気温が38度が予想され、実際に36度と高温で試合に挑むことになりました。これまでの先発メンバーの疲労、更にはベンチメンバーも先発メンバーに劣らない能力を備えていると感じた事もありこのメンバーになったと推測されます。

 しかしはおそらく予想外だったのは、交代で入った6人が6人とも地に足がついていなかった事です。前述したように、各選手は荒を探すまでもなく低調な出来に終始してしまいました。

 ある程度先発組に比べて仕事ができないにしても、最低条件の引き分けにするために決まり事も徹底されていたはずですが、槙野の対応や山口のボール奪取率の低さを見てポーランドに攻めのキッカケを与えてしまっています。かつ宇佐美のボール離れの悪さと判断の悪さ、武藤のゴール前を横切る回りの見えてなさ等、W杯の舞台のプレッシャーを悪い方向に作用させた動きが見えました。

 出してみないとわからないという意見もあるのでしょうが、これはグループリーグの突破を決める3戦目という事も考えればテスト的な要素を盛り込んで反目に出た時に立て直しが効かない精神状態になるのは容易に想像ができます。そして実際に試合はそうなってしまいました。

 この点で言えば、結果的に主力を温存できたものの、試合遂行の面で言えば完全に失敗したとみるべきでしょう

 故にこの部分を叩く意見というのは理解すべきでしょう。

 

2 スタメン情報のリーク  批判度 70

 これも問題です。この試合に関しては相手の本気度がそれ程でもないため問題にはなりませんでした。しかし、対戦相手というよりも自チームに疑心悪鬼が生まれるという意味では良くなかったでしょう。

 もっともどこまでの人物にその情報を開示したかという事も問題になり、一概にマスコミだけを攻めるわけにはいかない問題ともいえるでしょう。マスコミに節度がないのは今に始まった事ではありません。

 そういう意味でもう少し注意深く意思疎通を内部で測る必要性はW杯が終わった後でも検証する要素とはなるでしょう。

 

3 負けてる状態でのパス回し 批判度 10

 意外に多いのがこの批判です。しかしそれ程批判される事でしょうか。

 「負けている」という現象をこの試合1試合で捉えるのか3試合トータルで捉えるかによって意味合いはかなり違ってきてしまします。

 1試合で捉えると当然「負け」です。トーナメント戦なら100%あり得ません。あまりに実力がかけ離れた相手に対して1点差負けなら健闘と言える、、という意味でそういう戦術を取るチームは過去にもあったように思います。しかしながらこの試合では当然そのような意図でボール回しをしてはいません。あくまでもグループ突破という意思の元、次に進むという意思の元に行われていました。

 チームはイエローカードを乱発しても、失点しても、他会場のスコアーが不利に動いても終わりとなり、チーム全体の意思疎通が出来ていないとなかなか出来る事ではありません。

 グループリーグトータルとして考えれば批判される点は余り見受けられません。

 ラフプレーが「頑張った証」と称賛される方がよっぽどどうかしていると思います。チャンピオンズリーグの決勝のセルヒオラモスのプレイでモハメドサラーがその試合のみならずワールドカップに28年ぶりに出場したエジプトというチームに対しても多大な不幸を与えた事を見逃す世論の方が悪と個人的には感じます。

 

4 他会場の結果にゆだねた 批判度 50

 ボール回しとセットでこれが批判されるのは十分に理解できますし、こっちの方が論点になるのは間違いのない事です。

 日本は自力で突破の可能性が最後までありました。故にボール回しをせず、得点を取りに行くのがフェアプレー。凄く理解できますし、それが普通だと感じます。

 最後まで全力で点を取りに行けば、例えその結果失点したり、またはイエローカード乱舞でグループリーグ敗退をしても、「日本代表は最後まで頑張った」と評価してくれる人もいるでしょう。

 

 しかしです。

 

 実際そうなった場合は、やはり批判の方が多くなるのは間違いありません。

 何故突破できるルールに従わなかったのか、とか、あそこでイエローもらうのはばかげているとかそういう論争になってしまうだけです。

 そしてその後に残るものと言えば、グループリーグ敗退で次に進めず、今後に向けてのサンプルを残す事もできない未来です。

 何も得ずに、更に批判にさらされるのです。そして、そうなる事が見えています。それほど日本チームはバランスを崩していました

 唯一部外者が「侍は潔く散った」「日本の3戦は潔かった」という、「一時しのぎの評価」を得るにすぎません。

 そしてそのような評価は1か月もすればだれにも思い出されず忘れ去られるだけです。

 

 しかし、西野監督は普通でない戦略を取りました。そしてチームの全員が完全ではないにしてもそれにのかったのです。そしてそれを成立させました。

 西野監督はこの時点で「自分の3戦目の戦略は失敗に終わったと認めた」のです。この部分を語られている記事はまず見ませんが、西野監督としては色々と受け入れる中でこれが最も大きな決断だったはずです。

 

 自分がターンノーバーして失点したおかげでチームは浮足だち、かつ岡崎の怪我の交代と乾の投入により交代枠が1つしかなくなり、攻撃に転じる時でもチームの現在の精神状態の落ち具合を考えると1点を取るのは難しい状況と判断したのです。でなければこの采配にはなりません。

 これを「チームを信じていない」「潔くない」と取る向きは多いでしょう。

 「自分のチームを信じず、他のチーム(コロンビア)を信じた愚かな判断」この意見は半分はあってて半分は間違っていると感じます。

 「自分のチームが出来ないと悟り、自分のチームに苦い戦術を信じさせ、他のチームを信じた」という事です。これは自分のチームを信じてないわけではないという事を理解するべきでしょう。そして言うまでもなく、この行動は100人いたら1人の人ができるかどうかのレベルの采配という事です。

 

 その采配にはただただ敬意を表するとしか言えません。あのまま自身の采配失敗を受け入れずにいたら、恐らくは攻撃も守備もどっちもする事ができず、中途半端な攻撃を繰り返し失点した可能性は高いです。それ程崩れていました。

 

 もちろん失敗した場合は容赦のない批判と全方向否定が待っています。その重圧をわかって実行しているという事です。

 成功しての批判は反骨心を育てて闘志へとエネルギーを変換してくれる事でしょう。

 

ベルギー戦は正々堂々と、、、という意見はベクトルが違う

 今回批判に立たされながら決勝リーグいったのだから、ベルギーは勝たなければいけない、とか、正々堂々と正面から向かえ!という意見は、今回の采配を批判する人だけでなく、擁護する人の意見にもかなり見受けられます。

 

 これは正しいでしょうか?

 

 そもそも「正々堂々」がどの意味をさすかはかなり広義であり、意味をなしていません。むしろ、申し訳ない意見ではありますが、礼を欠いているようにも思います。

 

 「正々堂々」が「最高のスタメン選手で挑む」であれば正しいです。

 「正々堂々」が「守りに入らず攻撃的なサッカー」であれば正しくありません。

 「正々堂々」が「相手を研究し、状況によっては守備的な戦いを厭わない」であれば素晴らしいです。

 「正々堂々」が「リードしたら残り数分でボール回しをする」であれば勇気が入ります。

 「正々堂々」が「リードしたら残り数分でボール回しをする事は許されない」であれば親善試合にすべきでしょう。

 「正々堂々」が「負けても潔く散る」であればもう少し掘り下げた議論が必要です。

 「正々堂々」が「相手を怪我させてでも勝ち切るサッカー」であれば間違いです。 

 

 少なくてもこのように感じます。

 

 選手はこの試合の後もインタビューに追われて詰問されています。目的を達成してもその理由を迫られます。ましてや他試合の結果に身をゆだねたわけです。大会が終わるまでスッキリしない気分をどこかに抱えてしまう選手もいるでしょう。

 しかし、もうこのようなシチュエーションはこの大会では起きません。後はPKという運要素はあるものの、勝つか負けるかの試合です。その場所に立てたチームはわずか世界で16チームしかないのです。むしろそういうプレッシャーを少しでも還元させてあげるのが見るべき方の態度なのかとは思います。そしてそれは選手達もわかっており、おそらくは心配ご無用です。選手は既に「正々堂々」戦う覚悟はできています。

 

 ましてや「勝たなければいけない」という言及は確実に批判側の感情論であり、相手を全く見ていません。相手の実力やサッカースタイル、予選の戦い方、予選での調子、マルチネス監督の思惑、、それらを見ていないのに「勝たなければいけない」という意見を普通に考えても明らかにおかしい論点になっているのはわかるかと思います。

 

 ただし、それらを含めて、色々な人が心を動かし、思う事を語る。そして楽しむ。生きているという事を実感できる瞬間ではないでしょうか。

 

 何れにしても楽しみを持ち越せている事に関しては非常に恵まれていると感じます。

 ベルギー戦でもどのような試合を見せてくれるか非常に楽しみな所です。

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